第9話 秋葉原爆破テロ事件-09
ゴリゴリと動いて行ったそれが、あのバタフライナイフだろうと気付くより早く、俺は首の後ろに手の平を当てていた。
「あれ?」
吹き出す
「あちっ!」
思わず声を上げて手を振り回し、俺はそれを投げ捨てた。
あの有名な
そこから小さな火花を飛ばし続けてる。何なんだ、これ?
「危ないっす!」
倒れたまま見上げた先に、固定材をかけたバタフライナイフで切りつけられる
「あぁ……えぇ?」
ピンモヒが横に
「バ、バカな、なぜ?」
「バカは、あんたっすよ」
どもるピンモヒを
「彼、この1500番宇宙の、ただの高校生っすよ? ナイフで人を刺せる
「え? だました?」
かなりショックだった。思わず俺は、そう口にしてしまう。言葉に出るよね、これは。
「敵を
いや、思うよ。そりゃ。
「さっき、固定材をかけてたじゃねぇか!」
ピンモヒがキレた。だまされたと気付いた
「ありゃ、ただの栄養剤っす。残念ながら」
「この野郎!」
再びナイフが
「ホントばかっすね」
そう言いつつ
「さんたく君、それ持って逃げるっすよ。君が捕まらなきゃ、このビルは爆破できない。僕らの勝ちっす」
満面の笑みで俺に告げる
「そんなガキ放っといて、後楽園球場を先に爆破してやるぜ」
「
魔術師と呼ばれたい男は、大げさに肩をすくめる。
「僕も参加したっすよ、後楽園遠征。ただ言われた通りに爆弾仕掛けると思うんすかね」
わぁ、ピンモヒの顔が真っ青に。
「ついでに。最上階の起爆装置、僕に設置させたの誰っすかね?」
今度はピンモヒの顔が真っ赤に。こいつ、面倒くさい事は他人に投げるタイプだね、どうやら。
「マトモに動くと思ってるっすか?」
「
完全にキレたピンモヒが大きく振りかぶり、ナイフを振り回す。ただし、俺に向かって。
「さんたく君!
叫びながら俺とピンモヒの間に、
「魔術師さん!」
さっきレイヤーなガンマンさんが言ってた。不意を突かれるなど意識が
今がそうだったんだ、俺のせいで。
「くたばりやがれ!」
肩を押さえつつ、俺の
バランスを失って、魔術師と呼ばれたい男は昨日できたビルの裂け目から転落した。
「あ~れぇ~」
「魔術師さん!」
もう一度、俺は
「
そう思って見ていた俺の、無防備な腹が無情にも
上がってくる
「馬鹿にしやがって。俺はな、無視されんのが一番、我慢ならねぇんだよ!」
そう言いつつ、ピンモヒが
胃の中、空っぽらしい。もう我慢する事もできず
逃げる余裕なんて無い。結局、みんなに
メガネが、どこかに落ちたらしい。視界が
「さっさと、そいつを渡せ!」
ピンモヒの声に、うつ伏せに倒れた状態で首をひねって
「何だ? その目は!」
キレた、やっぱり。
このビルを爆破する起爆装置を奪おうと、
俺が習ってる
基本的に相手の身体のどの部分でも十分な威力で当れば有効打。だから面、胴、小手の他に四番目のヒットポイントが有る。
「くらえ!」
その一言と共に上半身をひねって、俺はバックハンドで鉄パイプを振った。
ピンモヒの
そう、足。剣道には無い攻撃を可能にするスポーツチャンバラの技。逆転の一撃を俺は全力で放つ。
鉄パイプが
しかし一瞬で、それは手応えを失ってピンモヒの足を通り過ぎ、
「くっ……」
うめき声しか出ない、もう打つ手がないから。それでも、相手も無傷とは行かなかったらしい。
「よくもやってくれたなぁ、クソガキ。骨が折れる所だったじゃねぇか!」
左足を引きずりながら、
「切り刻んでやるぜ!」
こんな所で、何もできずに終わるのか? 俺。
「くたば……いでぇえぇ!」
トドメを宣言している最中に、いきなり悲鳴を上げてピンモヒが右腕を押さえる。
そこに黒い棒状の物が生えていた。
「痛ぇえぇ! 何だ、こりゃぁ!」
ピンモヒが左手で棒を引っこ抜くのを、
「ひ、
俺のぼやけた目は、黒いスラックスの
ワインレッドの女性物の
「い、痛そう……」
まるでスローモーションのような一瞬の後、ピンモヒは吹っ飛んで壁に激突し、そのまま
「ひぃ!」
情けないけど、悲鳴が
風を切る音を残して、俺の頭上を黒いスラックスとワインレッドのパンプスが通り過ぎていった。
「ロープ?」
我に返って
さっきの
「
多分、女性。誰なのか全く判らない。ただビルの裂け目から下を
「え?」
名前を呼ばれたような気がして振り向く俺の視界の
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