第8話 秋葉原爆破テロ事件-08
あ……。
一瞬だけどピンモヒの事、その場に
「そこで指くわえて見てやがれ!」
捨て
「まずいです、ビューレットさん。起爆装置は遠隔操作で、このビルの最上階に有るんです」
救いを求める人達は次々に情報を
「
「何だとぉ? んじゃ今すぐヤツを追いかけねぇと!」
「いや、
「あのピンモヒは、俺に任せてください!」
そこに
「俺が食い止めます」
「あの~」
「ピンモヒって、
「あ!」
そっち? 皆さんの視線の理由。
確かに魔術師と呼ばれたい男の
「あの
語尾が消えてく、何か
「なるほどなぁ、それでイイんじゃねぇかぁ? 短い方が言いやすいしよぉ」
あぁ、ため息が出るよ。こう言う時、
「まぁ、確かに」
こう言う時の銀八さんのひんやりした対応も、もう慣れっこだけどね。
「コードネームはピンモヒっすか。ちょっと哀れっすね」
「それは構わん。が、少年。君には荷が重過ぎるのでは無いかね?」
ビューレットさんこと、俺の命の恩人は
「大丈夫です、捕まえる訳でも倒す訳でも有りませんから」
「そりゃぁ、どう言う事でぇ?」
「時間稼ぎ、ですか?」
やっぱりオッサンよりガス人間8号さんの方がイッタクだと思う、今ので。
「そうそう。ピンモヒは弱い者をなぶるタイプだと思うんだ。だから俺が
「我々はこのビルの爆破を止め、
レイヤーなガンマンさんが、俺に問う。
「はい! そうです」
胸を張って俺は答える。信じて任せて欲しいと。しかし、返って来たのは否定だった。
「危険過ぎる。君は、この1500番宇宙の、ただの高校生では無いのかね?」
もちろんそうだ。だからこそピンモヒを釣るには最適のはずだ、俺はそう主張する。
「確かに。だからこそ、この人物が言うように危険過ぎますね」
ビューレットさんを信用してない感じだけど、気化生命体である1637番宇宙のもう一人の俺の言葉も、やっぱり否定だった。
やっぱり俺、役立たずなのかなぁ。
泣けてきそうな状況の中、俺をじっと見ていたビューレットさんが、あの渋い低音ヴォイスでつぶやいた。
「だが、それに
発言した本人と俺以外の、そこに
「本気ですか?
「おいジジィ! このボウズに……」
異世界から来てる、もう二人の俺が
「決して無理をせぬ事。挑発したら逃げたまえ、私が
「判りました!」
思わず敬礼する俺の肩を、ビューレットさんはポンと叩いて送り出す。同時に、自分を班長と呼んだ
「少年の
「多分そう来ると思ってたっすよ。ハイハイ、承知っす」
あと魔術師っす。と付け加えて
「
「ボウズ!」
多元宇宙の同一人物である二人の俺が叫ぶ。振り向く俺の目に、それを我が命の恩人さんが
「二人は私を手伝ってくれ。早く済めば、それだけ早く少年の元に
その言葉を背に、俺は走り出す。やっと俺を信用してくれる人ができた。それだけで、何でもできる気がする。
散乱する家電品の間を走り抜け、階段を
「いや~イイお仲間が
後ろに付いてきてくれてる
「まぁ、ね」
「およ? 歯切れが悪いっすね」
いい仲間だよ、もちろん。仲間だと向こうも思ってくれてるなら、だけど。
二人に認められたい、仲間だと言われたい。その一心で犯人探しにアキバに来たけど、捕まってちゃ、ダメだね。多分。
「ふ~む。ワケありっすか。若いってイイっすねぇ」
それこそ、パッと! って感じで。
「器用だね、
「お
そんな
「さんたく君。これ使えますか?」
あ、また話し方変わった。どうやら真剣モードらしい。こんな時ちょい、銀八さんに似てる。
「ナイフ? 一応は」
「刺せます? 人を」
「
俺は多分、
「
そう言いつつ注射器の中の液体を、ナイフに注ぐ。
「これは使えないっしょ? 意外と針が刺さらないっすから。けど、ナイフなら君でも振り回せるっすね」
「あと一つで最上階っすよ」
階段の踊り場から外が見える。昨日、斜めに
ただし、踊り場の足元はビルの
「あいつが
「誰が
その声は壁から直接、聞こえた。正確には、壁から半分出てきた状態のピンモヒ自身から。
「ぐほぉ!」
「
腹を押さえて、魔術師と呼ばれたい男は踊り場に
「お前も俺と同じ1962番宇宙の出だろうが? ずっと横について来てたっての、気付かないのかよ?」
意識を失って倒れた
「やめろよぉ!」
叫びながら俺は、さっき受け取ったバタフライナイフを構えて突撃していた。
「おっと。危ねぇなぁ」
軽くかわされ、俺は危うくビルの裂け目から、外を
「そのナイフによ、固定材ぶっかっけてんの見てんだよ。誰が、やられるかってぇの!」
そう言いながら、ポケットからペンライトみたいな金属の筒状の物を取り出した。
「これが欲しいんだろ?」
あれが、そうか。爆弾の起爆装置か。なら、意地でも奪い取る!
「どぉりゃああ!」
「ど
ブロックできる、両腕で抱え込む。けど、その為にナイフを落としてしまう。俺、やっぱり
「離せよ、クソガキ! うげぇ!」
暴言の後に、
「グッジョブっすよ、さんたく君」
半身起こして、ダーツを投げ終えたようなポーズのまま、
「
よく見ると、その言葉通りピンモヒの尻に、あの小型注射器が突き刺さっていた。
「さんたく君、今っす! 壁に……」
最後まで言わせるより早く、俺は
その手から、あの起爆装置が転がり落ちる。
俺は奴の足を離し、それを拾い上げて魔術師と呼ばれたい男に放り投げた。
「魔術師さん! 頼んます!」
「いい事あるっすよ、素直な子には。さんたく君……危ない!」
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