第4話 秋葉原爆破テロ事件-04
今、俺は秋葉原を
「えっと……なんて病院だっけ」
秋葉原爆破テロ事件、そう呼ぶしかない出来事は思った通り、銀八さんが追っていた強盗団
まだ煙が吹き出すビルの下、
「
相手の声を確認するより先に、俺はコードネーム? を呼んでいた。
「二人とも見つけましたよ」
「無事です。が、
再び感謝の言葉を繰り返す俺に、ガス人間8号さんは笑う。約束したでしょう? と。
「とりあえず、ご両親には連絡して来て頂いています。君も彼らの姿を確かめたいでしょうから、病院の場所はメールします」
そう言って通話は終了、
「行かなきゃ」
今度は
「あの人は……」
そう。あのレイヤーなガンマンは俺達を、あの場所にいた全ての人達を、助けてくれたんだろうか?
だとしたら……なぜ?
会って聞いてみたい。そんな事を考えながら秋葉原駅の電気街口へ急ぐ。
駅を目前にしてた俺の目の前を、あの人が横切った。
そう、あの人。
数時間前、中央通り交差点の横断歩道の向こう側に
通り過ぎた後に、スカーフが。これって落し物? まさか、こんなドラマみたいな展開って有り?
「あの……」
ビビりながらも声をかける。落としましたよ、って。
「あら、ありがとう」
短い返事。でも、心が弾む。
スケコマ
多分、顔を赤くして見つめている俺に、彼女は笑いかけた。
「君、
え?そんな。
心臓が爆発しそうだよ。こんな事、ホントに有るんだ。
何だか首の後ろが
「じゃぁ、これで。ありがとう」
それだけ告げて、彼女は去って行った。一人残された俺は、しばし
「こんな事が無かったら、お姉さん、
電車を待つ間に空の色が変わって来ている事に気付く。すでに夕刻を過ぎていた。
午後から出かけたとは言え、かなりの時間をあの爆破現場で過ごしていた事に気付き、俺は苦笑する。
「大変な休日になっちゃったなぁ」
そう口にした
「もしもし。あ、母さん」
電話は母からだった。
当然だね、秋葉原に行くと言って出たんだから、あんな事件をニュースで知れば
「俺は大丈夫。ただ、二人が巻き込まれて入院したから、今から見舞いに行ってくる」
電話の向こうから母の
「一目見たら、帰るから。そう遅くはならないよ。あ、電車来たから。んじゃ」
それだけ告げて
そして目指す病院へと、たどり着いた時には夜空が広がっている。もうそんな時間になっていた。
「済みません」
受付でヲタ
「もうじき面会時間終了ですから、お早めに。
念押しされて、俺は二人が
「あ……」
教えられた病室の前に、ガス人間8号さんこと
「どちらも、ご両親はお帰りになりましたよ。
「遅くなって、ごめん」
「いえいえ、私の連絡が遅かったですからね。この時間になっても仕方ありません。あの後どうなったか、ニュースで見ましたし」
だとしたら、銀八さんもレイヤーなガンマンがあそこに
「ヲタ
二人は並んでベッドで眠っていた。
「良かった……」
泣けてきそうになる自分が
「念の為、検査をするようです。おそらく大丈夫との見解でしたが」
医者の見立てを教えてくて、先ほど帰ったと言う二人のご両親も落ち着いて戻っていった事を、銀八さんは告げてくれた。
「そろそろ面会時間も終わりです。出ましょうか?」
「あ、うん。そうだね」
もう一度、二人の顔を見てから俺は1637番宇宙の俺、気化生命体の銀八さんの後について病室を出る。
すれ違う
「また、巻き込まれてしまいましたね。
正面玄関から出て、病院を
「言いたい事は判ってる、でも」
「そうですね。偶然でした、そう思います」
違う。そこじゃない。
また何の役にも立てなかった、そこが問題。
「ですが、すぐに君は逃げるべきでした。彼ら二人の事は私に
違うんだよ、銀八さん。
逃げちゃダメだ。
多元宇宙の事、そこにある、隣町のように普通に存在する異世界からやってくる凶悪な奴らの事、知ってるのに知らないふりなんてできない。
「あの日、お寺で言われたはずですね、
「今回も、何もできなかったよ」
「それで当たり前ですよ。君は普通の高校生なんですから」
「でも、俺……やっぱり、
真っ直ぐに多元宇宙のもう一人の俺を見つめて、きっぱりと俺は告げた。
「
「判ってる。でも、今回みたいな事が当たり前に起きるんだろ? 多元宇宙の、他から来る奴らが犯罪者とかなら」
「それは……確かにそうですが」
ガス人間8号さんの困ったような顔に、俺は
「どこに
「ええ、確かに」
「なら、何ができるか判らないけど、二度とこんな事が起きないようにしたい」
「しかし君は……」
「ただの高校生だよ。でも見て見ぬふりして逃げても、やってくるんでしょ? 他の宇宙から。あんな奴ら野放しにできないよ」
ピンクモヒカンとその仲間のパンク軍団を思い出して、思わず声に熱がこもる。
「それに、この世界でだってテロは
「それも事実です。確かに」
それだけじゃない、大国が隣の国に突然、攻め込む。
そんな事、現代で普通に起きるんだ。歴史の授業じゃ無く。
「最初、あのニセ総理の時、思ったんだ。あんなのトップに立たせちゃダメだって。面白がって人殺しやる奴なんて」
今回も多分、同じなんだ。ピンクモヒカンを見て、俺はそう確信してる。
「授業で習った……その、確か……パリ・ポタとか言う、
銀八さんが大きく
「
言葉に詰まる。確かに勉強できる方では無いけど。ここで、それを理由にされるとは思わなかった。
「でも、それでも、俺は」
「君の
「琢磨くん、我々の事は忘れなさい。そして
「判った。もういいよ!」
叫んで、俺は多元宇宙のもう一人の俺に背を向けて走り出していた。
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