第2話 特殊指定動物密輸事件-02
ニセ総理事件での小学生、今はイケメン青年のガス人間8号さん。
育ちが違うと、同じ顔立ちのはずなのにオッサンとは大違い。できれば俺も、こうなりたい。
その8号さん、手にした写真を俺に手渡す。そこには大勢の、見るからにマッチョな男達が写っていた。
「おい!待てや、ガス人間8号。オレ様の方が先だぜぇ、事件の話ならよぉ」
イラつきを隠す事もなく、オッサンは立ち上がる。
そこに、カフェのドアが開いて、聞き
「
ちょうど良かった。
立ち上がったまま、となりのオッサンが正に
「
そりゃ、詰まるよ。
どうする? オッサン。そう思っていたら、いきなり
「な、な、
緊張にガチガチ、
「申し遅れました」
そう口にしながら、1637番宇宙の
「お初にお目にかかります」
こちらは余裕、と言うか上品にご
「
「
「いえ、そうでは無いのですが。趣味のサークルで
「あ、なるほど。チャンバラの」
「ええ。そうです」
さらりと
「なつめ、たけしさん。に、さかもと、ぎんぱちさん。ですね。どうか
母は90度近いお
「も、もちろん」
「これからも、我々にお
何をお
「
いや、俺は困ってるよ。もっと。
「とにかく、もう少し居てちょうだい。ここでいいから」
「何かあった?母さん」
「
日にち間違えたりするような、いい加減な坊さんでは無かった。そう記憶してる。大丈夫かな?
「じゃあ、見つかったら、
そう言い残すと、母は急いで寺の茶店を出て行った。
「こりゃ、事件だぁなぁ。ボウズ」
「で、無ければ良いけど」
オッサンの狙いに気付いて、俺は
「オメェの依頼は後回しだぁなぁ、こりゃ。ガス人間8号さんよぉ」
ガス人間8号……いや、ここでのコードネーム
コードネームは今、俺が勝手に決めた。
「仕方ありませんね、今回は。とりあえず私一人で探索するしか」
席を立つと同時に、振り向いて銀八さんは俺に忠告してくれる。
「ただ、さっき見せた強盗団が、この辺りに潜伏中のはずです。気を付けてください、
「オラァついで、かよぉ」
「んじゃ、オレ様の件を頼むぁ。手伝ってくれやぁ。
いや、アンタまで、かよ……オッサン。
「でだぁなぁ、コレなんだがよぉ」
こっちの
いつの間に手に入れたんだ? スマホなんて物を。
「
「放っとけやぁ。まぁ、これ見ろって」
やっぱりスマホだった。始まったのは一匹の犬らしき動物のムービー。
どデカイ音に、その犬らしき動物が驚いて飛び上がる。
「悪趣味な動画だなぁ」
「確かになぁ……まぁ、こっからだ。肝心なのはよぉ」
首をひねりながら、続きを見ていた俺の目は多分、まん丸になって行ったんだろう。
「透けて行ってる……」
「あぁ、CGなんかじゃ無ぇ。正真正銘のスケイヌ、
やっぱり犬だったのか。
最初はただの、やたら
「上がってきそうだ……」
中学の頃、理科室に置いてあった人体模型の犬版。しかも
「二度目でも来るぜぇ、コイツぁよぉ」
オッサンも口元押さえてる。一回見てんのか?まぁ……効くね、これは確かに。
更に筋肉が透けていき、骨に抱かれた内蔵が剥き出しの状態で、犬め走り出したよ。悪夢か、これ。
「げぇ。
その言葉通り、胃袋や腸が走るたびに
「血管も消えたらよぉ、血液だけが流れてんだろぉ?後は骨のみだぜぇ」
ホントに上がってきた
「悪趣味通り越してるって、これさぁ」
「これだけ見てりゃなぁ」
1398番宇宙の
「これでもなぁ、1438番宇宙の連中に取っちゃよぉ、最大の輸出商品でぇな」
「はぁ?」
かなり
「
オッサンは残りのメロンフロートをすする。
「生きたままよぉ内臓の様子やら、血液流れる血管なんぞが見えたらよぉ、医療機関だの新薬の実験やるトコなんざ、どぉ思うよ?」
俺の表情から、それを読み取って、コードネーム棗、のオッサンはニヤリと笑った。
「この犬が
で、それが俺に何の関係が?
また表情を読んだオッサンが説明を続ける。
「この犬を、個人貿易商の野郎がオレ様んトコの
「無許可で?」
「お、話が早ぇな。ボウズ」
そりゃ、判るよ。話の流れから。そうは思うが口には出さない。
「1438宇宙の方でも、オレ様んトコでも、コイツぁ協定違反だってなぁ。今、共同捜査になっててよぉ」
「で、また。ここに逃げられたと」
「よっく判ってんじゃねぇかよぉ」
口笛まで吹かないで欲しい、オッサン。こっちが恥ずかしいから。
「その上、だ。この1500番宇宙は、どうも気候だか環境だかが似てるらしくてなぁ」
「ここでよぉ、もし万が一にでも犬コロが
だから、それが俺に何の関係が?
「オメェよ、引きの強さは証明済みだしなぁ。
ニセ総理事件は完全に巻き込まれ、だろ?
「皆まで言うな。気持ちは良く判んぜぇ」
何も言わせず、オッサンは俺の肩をポンポン叩く。
「とにかく、だぁ。その個人貿易商とだぁなぁ、そこの社員の2人が犬コロ連れて、ここに逃亡して来たってぇのは理解できたぁろぅ?」
理解は、できた。ただ納得はしてない。
「俺まだ高校生だって、前にも言ったよね?オッサン」
「あぁ。だがなぁ、二つの、じゃぁ無ぇなぁ。三つの世界の
「いや、無茶苦茶だって、その
「な事ぁ、気にしてねぇよ」
いや、俺が気にするよ。オッサン。
「まずは、ここの
俺は肩をすくめながら、コードネーム
「そりゃ、オメェのカァちゃんらが探してっだろうがよぉ?」
「母さんとの約束を守るなら、俺はここから動けないさ」
さぁ、どうする?オッサン。
「ちっ。しゃぁねぇなぁ。俺も坊さん探しを手伝ってやらぁ」
え? それは予想外の答え。
「いや、オッサンは自分の事件を追えよ」
「
いや、偶然に頼りすぎだって、それはさ。
「ボウズ、頼むぜぇ。ちょい人助けも
珍しく目がマジだった。訳有りの事件なのか?ちょい俺の好奇心が動く。
「とりあえず。オレ様は墓地の方、探しに行くからよぉ。オメェは自分の考えで動きな、ボウズ。んじゃぁなぁ」
そう言いつつ、今回の事件資料を置いて、カマキリの顔見たいなグラサンを
そこに声が
「済みません、お客様。お会計を……」
あ、はいはい。そう応えてレジに。
しかし、今時珍しい
「
「先程のお
バイトらしい女子大生のお姉さんに罪は無い。でも、
「判りました……」
覚悟を決めて、多元宇宙の二人の俺の飲み食いした分も、まとめて払う
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