ゲームをツクるように小説を書く

 伊草いずく様のエッセイを拝読してから、自分の中の設計派と監督派について考えていた。 https://kakuyomu.jp/works/16817330652957001952/episodes/16817330654037767513

 そしてようやく、私は「ゲームを作る感覚」で小説を書いているということに気が付いた。


 

 例えば、944文字で書いた「迷子の風船」

 https://kakuyomu.jp/works/16817330650636230621

 これはクロノヒョウ様のお題に参加すべく書いたものだ。

 https://kakuyomu.jp/user_events/16817330650610407740

 なので、キーワードが「迷子の風船」、文字数制限が千文字と決まっている。


 最初に、風船の紐が手から手へ渡されるイメージが沸く。

 渡したのはウサギの着ぐるみで、もらったのはリクルートスーツ姿でしょぼくれた顔の女性だ。

 

 展開されるのはアドベンチャー風のゲーム画面。

 背景があって、キャラクターの絵がその前あって、下にセリフが表示されるタイプ。

 

 必要なのは、水彩でぼやかしたようなショッピングモールの背景。

 単調であまり印象に残らないBGMと、人のざわめき音。

 主人公とウサギの着ぐるみのキャラクター絵は、この短さだと表情差分なし(表情が変わらない=あまり人物詳細を詰めていない)

 ウサギの着ぐるみが風船を差し出してくる一枚絵(スチル)。

 

 多分このあたりが、世界設定やキャラクターの書き込み部分にあたるのだと思う。

 短い話だと、ここまでは一気に脳内に展開されるので、あとはこれにシナリオを書き込んでいく。

 


 

 これが金欠ローグだと、キャラクターが実際歩き回れるくらいのマップを頭の中に用意する。スーパーファミコン時代のRPG風でドット絵だ。

 NPC(「ここはゴンゴルノの町よ」って町の入り口で言ってくれるキャラクター)も配置する。

 もちろん小説において、読み手が勝手にキャラクターに話しかけることは無い。


 だけど、酒場で隣のテーブルの冒険者に話しかけたら「よぅ、調子はどうだい。敵が強いと感じた時は、武器の持ち替えも有効だぜ」なんて言ってくれるといいと思うから、結構いろんな人を妄想する。

 主要キャラクターたちに表情差分はあるが、喜怒哀楽程度で、そこまで細かすぎない程度の漫画チックな見た目をしている。

 



 薬師の場合は、最新の映画か? みたいな見た目のゲーム画面を思い描いていた。(オープンワールド系)

 草木のそよぎや、水の飛沫がキラキラするところまでを表現する、リアル寄りのゲームだ。

 そして薬師の最大の特徴が、主人公ビビの目から見た一人称視点のゲームであるということ。

 だから、ハンターの見た目は絵心さえあれば描けるのにというほど詳しいのに、ビビの顔がぼんやりとしかつかめない。たいてい見えているのは彼女の後ろ頭くらいの感覚だからだ。



  

 物語を作るという段階では、こんなことが脳内で繰り広げられている気がする。

 キャラクターは最初期にステータス(性格も含む)が決まっていて、そこから基本的に逸脱できないらしい。

 戦士はどんなに成長しても魔法使いより高魔力にならないし、一番優しい子にしようと決めたキャラは常にパーティー内で一番優しい選択を取り続ける。

 ただ、その閾値しきいちは作品ごとに動いて「優しい=命まではとらんよ」だったりする。

 

 KAC連作をやってみて感じたが、もうラスト7話目で話を閉じなければいけないというのに、美月のステータス(内省力?)では自力で恋心に気付くことができなかった。ここがどうしても覆らない。

 友人に来てもらって何とか乗り切ったが、締め切りまで時間が無いのに冷や汗ものだった。




 情報量の多い世界ほど、登場人物の制御は難しい。(ビビ、おまえのことだ)

 細密に描いた分だけ、そのキャラクターは可能性を持つように感じる。

 喜怒哀楽の4パターンだけの表情より、「泣き笑いみたいな困り顔」が表現できる方が表現に幅が出るからだと思う。

 

 その反面、読み手様の「入るスキ」みたいなものがあるのが、ドット絵の世界観なのかなとも思う。

 粗いドット絵には想像の余地が残されているからかもしれない。

 金欠ローグにたくさんコメントをいただけたのは、そういう部分もあったのかな、なんて想像している。




 ここまでが物語の構想段階の話。


 それと別に、自分にとっての小説を書くという作業は、自作のゲーム内を歩き回り、キャラクターに話しかけたり、アクションしたりしてその反応を書き留めることに似ている。


 ただし、そのゲームは、未完成のマルチエンド方式だ(最低だ)

 膨大な選択肢と分岐とバグが用意されている。

 自分でも把握しきれなくなっている分岐の先に進むと「なんじゃこりゃ! こんな話になるはずじゃ……」と思ったり「いや、これはこれでアリか」とそのルートに進んだりする。

 そうやって、セーブとロードを繰り返して、ある程度整合性のとれるストーリーになるよう物語を紡いでいく。

(すでにゲーム内容自体がほぼブラックボックス化しているので、正しい選択肢に辿りつくための多大なトライ&エラーが発生する)


 つまり、ブラックボックス化される前に、きちんと情報を整理したものがあれば、もっと少ない労力で書けそうなのである。

 でも……どれがきちんとした情報なんだろうなぁ……。

 

 普段ゲームをしない方には「なんのこっちゃ?」なエピソードになっただろう。ごめんなさい。

 逆に一度でもゲームを作ろうと思ったことのある書き手様には「小説≒ゲーム作り」の感覚はピンときていただけたかもしれない。


 自分ひとりでは決して掘り下げなかったであろう内容なので、伊草様に最大の感謝を申し上げます。


 そして、書いてみて思った。

「私、ゲーム作りたかった人じゃーん!」(デスクトップに置きっぱなしの、RPGツクールデータを見ながら)



 

 と、いうことで。カク&ヨムどちらの方も、文字情報である小説と、絵や音の結びつきっていかがなものでしょうか。

「脳内のキャラクターは全員声優付き」とか「展開されるマップがグーグルアースレベル」とか、お聞かせいただけたら次回から御作を見る目が変わりそうです。

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