『KAC2023 お題連作』の言い訳

 KACお題参加お疲れ様でしたー!


 今回、長編しか拝読したことの無かった方の短編にたくさん触れることができた。

 意外な一面を発見したり、このお題をこう料理するとは……と唸ったり。

 同じお題から生まれる多様性に、とてもときめいた。


 埋まる通知、流れるログ、時間との勝負。

 カクヨムコンテストを越える祭り感だな、と踊り明かした半月間。

 お忙しい中、拙作を応援してくださった皆様に、まずはありがとうございました!


 さて、自動キャラクターはKACのお題でも動けるか https://kakuyomu.jp/works/16817330652829980795/episodes/16817330653880325940

 という目標をぶちあげて挑んだ今回。1話ずつ舞台裏を公開していこうと思う。


※以下、KAC2023①~⑦連作のネタバレを含む※


①本屋

 これはエッセイに書いた通り、作品の枠組みを決めるために使った。

 ほとんど話したことのないクラスメイトの女子に「遊ぼうよ」って誘われるなんて、いいじゃない、春っぽいじゃない。

 ただ、これをアップした後で「美月がどういう意図で弥生を誘ったのかが、作者にも分からない」と気づいた。

 なにそれ、こわい。

 

②ぬいぐるみ

 これは、絶対ゲームセンターに行かせてUFOキャッチャーしたい。高校生が行かなくて誰がゲーセンで遊ぶのか(偏見)

 同時に卒業式をイベントを回収しておきたかった。

 あまり高校生活に良い印象が無い雰囲気だった弥生が、親が卒業式にすら参列しないというシビアな展開を生む。

 卒業式→ゲーセンの流れをスムーズにするため、美月の親まで式を欠席。

 後で回収できない穴になりそうでビビりながら次回へ。


③ぐちゃぐちゃ

 一瞬不埒ふらちな展開もよぎらなくはなかったが、高校生として「気持ちがぐちゃぐちゃ」をチョイス。

 水族館デートに浮かれる弥生を、持ち上げて落とし、さらに帰宅後踏みつけるという鬼畜の展開に持ち込む。

 この仕打ちに、かなり弥生のキャラクターがはっきりしてきた。『逃げ癖』からの脱却が、彼の超えるべき課題になりそうだ。


④深夜の散歩で起きた出来事

 急にシチュエーション絞ってくるんだけどぉ! と、青ざめた回。

 志望大学にちゃんと合格したという小さな自信が、弥生の足を動かす燃料となり、少年は夜を駆ける。

 1回くらいは777文字にも参加したいと欲を出したせいで、苦労した。

 ラストをガッツリ次の回に持ち越したのは、分の悪い博打。


⑤筋肉

 弥生と縁遠いお題=彼がこれから求めるべきものと、据える。

 一番ストーリーの展開に強く干渉したお題だ。

 ここまでで、この話は弥生と美月と、その家族の話なのだろうという手ごたえがあった。

 ②のぬいぐるみ回で発揮された「美月の距離近すぎ問題」に対するアンサーとして、イタリア人の後妻ママが登場。

 陽気なナポリの風(適当)で、一気に場がなごんだ。


 想定外だったのは、弥生の両親の反応。

 帰宅後に「あら、出かけていたの?」くらいの温度感かと思っていたのに、夫婦で必死に探してくれていた。

 主人公キャラクターの性格がはっきりしてくることで、周辺人物からの意外な反応が現れる。

 しかし、この回は長すぎ。そして、独立した短編とは名乗れない作りになってしまったなと反省しきりだった。


⑥アンラッキー7

 えっ、これって最終回の1回前なの? もう全力で畳まないとヤバんですけど!

 尺を全く考慮していなかったがために、ここまでの伏線的なものを全て回収してまわることになる。当然のように文字数もかさんだ。

 美月がインストラクター志望でしたなんていう、取ってつけたような将来の夢は、進行上の犠牲。


 弥生の母親は専業主婦で、父親の意向を強く子育てに反映させるタイプを想定していた。

 ラストの親子のやりとりで、弥生が高校生活を支えてくれた感謝を述べた部分が、彼の今作一番の成長要素かなと思っている。

 大学の入学式で教材を一気買いするうんぬんの話は、仕事が忙しくて卒業か入学式のどちらかしか休めなかった、美月の親サイドの勘違いにする予定だった。

 しかし、あのママさんのキャラでは、そんなありきたりの理由はかすむ。

 仕方なくスーツをバリィ! してもらった。その後ダイエットに励みつつも、豆腐は飲むという展開にも矛盾しないだろう。たぶん。


⑦いいわけ

 ありがとう、いいお題です(ニッコリ)

 薄暗くほの青い、大水槽の前で。「もう、いいわけしない」から始まる弥生の告白シーンくるか! と思いきや。

 僕はもういいよと、弥生が引っ込んでしまった。⑥までで彼はやりきったようだ。


 いや、そうだ。純情な少年の心をひっかきまわしやがって、いいわけすべきは美月の方だ。

 ここで初めて「そもそも何で弥生のことを遊びに誘ったの?」とぶつけてみたところ、美月からは「…………?」みたいな反応。

 事態は深刻だと気づいたので、チラリと名前が出てきたアユとしーちゃんを緊急招集。美月をガッツリ詰めてもらった。


 この件で分かったことは、弥生は物語の進行に従ってどんどん自分の内面に向かって思索を深めていくタイプだったのに、美月はこの土壇場になっても1人では自分の心の声を拾い上げられない子だということだ。

 逆に外の世界への理解度は、美月の方が高く、弥生は低い。

 初期値をどのパラメータにどれだけ振り分けるか、みたいなことをキャラクター作成時にやっていて、その基礎部分は作者都合では動かせない感じがした。

 

 恋心を自覚してからの美月は、もとからある行動力オバケ感を、そのまま告白に発揮。

 親心としてはここまで頑張った弥生に、告白シーンの主導権をあげたかったけど、このあたりは完全に制御不能。リトライできるほどの時間も無い。

 長い、やばい、でも削る時間もない。とりあえずゴールだ!


☆総括☆

 自動キャラクターはKACのお題でも動けるか → 動けるようだ。


 しかしこれは、短編連作とは言えないッ!

 特に後半⑤~⑦は、完全になじみの読者様に甘えた形になった。目標2千文字が消し飛んだ。

 ここだけ読みに来てくださった方が、ナンダコリャとなられたのではないかと思うと、申し訳ない気持ちであふれかえっている。

 連作をしたければ、時間ベクトルの無い題材を選ぶべきだなと肝に命じた。

 命じました。




 ということで、今回連作参加された方は、どのお題に一番苦労されたのでしょうか。

 皆様、さらさらっと涼しい顔でアップされていたようにお見受けしましたが、どれか一つくらい「これは苦手だな……」ってヤツがあったのではないでしょうか。

(エッ、ナイノ!?)

 また、この作品だけは絶対読んでおけ! というおススメKAC2023お題作品がありましたら、自薦他薦問わず教えて下さったら嬉しいです!

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