『薬師は独りで眠れない』3,4章の言い訳集

※拙作『薬師は独りで眠れない』のネタバレを含みます。※

※これは【小説家になろう】連載時の活動報告(≒近況ノート)からの転載です。※


【3章途中の言い訳】

 3章の3-6-1、3-6-2、3-6-3までの言い訳をさせていただきます。

 つまりハンター視点編のネタバレを含みますので、ご了承ください。


 こんな途中で言い訳をさせていただくという時点でお気づきかもしれませんが、これは番外編というか、ちょっと詳しめの設定メモというか、そのくらいのものでした。


 ただ、書いてみると、これをすっ飛ばしてハンターを帰還させて良いものかと迷いまして、タグに女主人公を掲げておいてぐぬぬ……ではあったのですが、本編に組み入れることにしました。


 しかもあくまでオマケなので、ボリューム的に一話分くらいのつもりだったのですが、ハンターさん語る語るであっというまに3話分。


 ギルバート少年の淡い初恋物語からの、やさぐれ街道。

 若かりし頃のハンターと、お師匠様の交流が書けたことで、彼の「薬師に油断する性質」が、どこ由来なのかハッキリしました。

 しかし初恋の人が先生で、老婆に救われ、今はビビにぞっこんとか、ストライクゾーンが広い人ですよね。


 さて、3-6-3「ビビ」ですが、著名なアーティスト様の曲に多大な影響を受けて書き進めました。溢れんばかりの愛とリスペクトで、歌詞に内容を寄せた部分もございます。

 何なら、この曲でビビの瞳の色が決まったほどです。

 あの美しくも切ない楽曲に、自分なりの幸福な解を出したくて、3-7「美酒」へと続きます。


 せっかくの男性視点なので、戦地でのハードボイルドな描写にチャレンジしたかったのですが、ビビと離れたハンターのヘタレ具合が、思っていたより深刻でダメでした。

 ここまでの彼を書いていた感触では、年相応のドライな一面が出ると予想していたんですが、全然でしたね!(嬉しそうに)




【3章末の言い訳 】

 当初3章のイメージとして考えていたのは「少女漫画的、王道すれ違い」でした。

 これまでの旅路で、だいぶ親密になったビビとハンターの距離を、精神的&物理的に離し、ライバルを登場させて、モダモダさせる。

 そして、互いの存在の大切さを再認識した二人が、知恵を絞り、手を取り合って、過酷な氷河で、雪ナマズを狩猟するのだ!

 ……と、勇んで書き始めたんです。


 最初に差し向けたライバルは、ハンターの初恋の人であらせられますアニエス公妃。

 これには、さすがのビビも一発で「この人は彼の特別な人だ!」と感づいてくれて、よしよしいいぞと、ほくそえんでおりました。

 それが、昼間に「この人が本命だったんだ!」気づいたビビが、夕方には「自分、二番手でもいいんで傍にいたいです」とあっさり決めちゃって、作者狼狽。


 さらにハンターのライバルとして現れた好青年ルークに、ビビが「いい人ですね」以上の感情を一切抱きません。

 かませ犬の予定で登場したルークではありますが、求婚しても一顧だにされない様子には、さすがに同情しました。


 また、途中、テオじいのあたりで戦争と命について少し触れました。

 昨今の動向もあり、かなり感情的になって書いた部分を、削って削ってまあるくなったものだけが本文に残りました。世界平和を祈っております。


 ハンターが出立してしまった後も、薬師として精力的に働き、彼を思って泣く素振りも見せないビビ。

(むしろ、行ったハンターのほうが戦地でメソメソしてましたね)

 かたくななキャラクターだとは思っていましたが、ここまでとはと嘆息し、私はあらすじを捨てました(二度目)


 毎度のことながらビビとハンターの好きなように、再会シーンが進みまして、「こんなんでいいの?」と戸惑う作者を置き去りに、二人はおさまるべきところにおさまったようです。


 ここまで一見薄情にも見えたビビですが、ハンターが帰ってきて、また、彼の気持ちを受け止めたことで、少し血の通ったポンコツ具合を見せてくれるようになりました。

 片付けが下手だったり、踊りが致命的に下手だったり、そういう一面が浮上してきたのは、ビビが今までよりもう一段階、ハンターに心を深く預けて「緩んだ」証拠なのかなと、感慨深く思っています。

 ハンターも同様で、酔っぱらったり、ポカミスを連発したりと、らしからぬ様子ですが、幸せそうなのでヨシ!


 そしてラストは、お楽しみ冬キャンプ回です。

 ハンターさんが楽しそうでたまらなかったせいで、やたらとページを食い、そのツケで雪ナマズとの戦闘シーンはカットされ、最後は氷に挟まったままで終了しました。

 知恵もへったくれもなく、釣りして、足を舐められて、おひげはチョンと切らせてもらっただけ。

 猛吹雪で狂う方向感覚を……とか、複数の薬の効果を利用して……とか、見事お蔵入りしました。

 でも「がたい」って、一度は使ってみたかったセリフなので書けて嬉しかったです。




【4章末の言い訳】

 薬の材料探しの旅のはずが、やや後回しになりがちだったので、締めくくりくらいは一行目からドラゴンを出すぞ、と決めていました。

 登場したドラゴンは、初っ端からハンターと相性最悪。バチバチやってくれるスタートとなった最終章は、王城が舞台です。


 ここにきて明かされる巫女や、病の正体など固くなりがちな雰囲気を、マクシミリアンが無邪気にかき回してくれて、とても助かりました。


 また、悪役皇后様や、無駄に偉そうな騎士、いじわる貴族令嬢など王城ならではのキャラクターを書けてとても楽しかったです。

 特にゼペットは、あんなに登場する予定じゃなかったのですが、面白すぎて最後まで目立ってしまいました。


 病弱なルミア姫は、生かさず殺さず苦しめられてきた不幸な生い立ちですが、アニエス公妃とヴァイスと宮廷薬師の深い愛情に包まれて、想定より前向きでしっかりした女性に育っていました。


 元気になってナナムスの実権を手にしたルミアvs皇后も考えていたのですが、そういうゴタゴタからは少し離れて、愛する夫と幸せになってほしくて、巫女からは外しました。

 竜大公が最後までユルくてありがたかったです。


 そしてそして、お城といえば舞踏会!

 もっと色々な説明にページを割かなくてはならなかったのに、それをほっぽってダンスシーンをねじ込んでしまいました。

 支度の終わったビビが、自分のことは「ほー」くらいの反応なのに、ハンターの格好には激しく食いついていたのが、なんとも彼女らしいなと苦笑いです。


「豪華なものには特に興味が無い」というビビの特性のあおりを受けたのはナナムスのお城も同様。

 先に出てきた質実剛健なアカランカ城とは正反対に、ゴシック様式の細部まで作りこまれた美しい城のイメージなのですが、ビビには見事にスルーされました。


 なんやかんやありまして、見事万能薬が完成。

 皇后の追放イベントでは、今まで完全に空気で、何なら後半は隣に座っているという描写すら省略されていた国王陛下が動きました。

 ゼペットも伴って雪深い辺境の地へ旅立った皇后は、綺麗なざまぁ展開にならなかったものの、アニエス様が凛として見送るところが書けたので、良いことにしました。



 書き始めた時は、万能薬ができてお姫様が助かって、めでたしめでたし。というところまでしか考えていなかったのですが、3章あたりからラストシーンをどうしようかと真剣に考えていました。 

(ビビに、万能薬ができた後はどうするつもりですか、と言われて一番焦ったのは作者です)


 筋書では、ゴナスの街の高台に、海の見える家を買って暮らすエンドの予定でした。

 ビビは海猫亭の部屋から見える海が好きだって言ってたし。時々コニーちゃんも遊びに来たりして、にぎやかで楽しそうだなと。


 それが、ハンターさんが褒美に望んだのはゼシカの森の小屋で、おおお? と、なりながらエピローグに突入。

 ここに居たくなかったのに、ここに帰ってきたかったみたい。とビビからセリフが出た時に、なるほど、と納得しました。

 そうか、お家から急に離したから、この子は不安で独りでは眠れなかったんだなぁ。


 最後の最後、ベッド上での攻防では、ぎりぎりまで朝チュン展開と悩みました。

 だって、1-1から一緒に寝てるのに、キスもせずに終わろうとしているなんて、異世界〔恋愛〕ジャンルとしてどうなの!


 結果はご覧の通りのありさまでしたが、このためにビビに名前を呼ばせなかったわけではなく、町ごとに名を変える彼のスタイル上、呼ばせにくかったというか、「ギル」や「ギルバート」と呼び捨てにするのがしっくりこなかったというか……。

 もしかして、やっぱりビビが恥ずかしかっただけなのでしょうか!?


 何はともあれ、旅を終えた二人は、これからも共にある未来を選んでくれました。

 魔改造された薬師小屋は、確かに街に住むより不便だけど、楽しく暮らせそうですし、これにて、ハッピーエンドとさせていただきたく思います。




【カクヨム限定追記】

 はいー。長々とありがとうございました。

 薬師をお読み下さった方たちが、「うわぁ、こんな適当に書いてやがったのか」と引いていないか、心配です。

 でも、ほとんどの方は去年お読みくださってますし、年忘れで、時効ですよね!


 作中で最大の想定外ポイントは、皇后断罪イベント時の王様の「ワシも行く」でした。

 アナタは実権をアニエス様に委譲して、国政の補佐役におさまる予定なんですが……と思ったものの、この方向で進めたラストのほうが、あまりにしっくりきたので採用されました。


 悪役皇后を華麗に「ざまぁ」する予定だったので、不完全燃焼となり、あらためて金欠ローグで挑戦することにし、そちらも爆死しました。

 しかしこれにより、自分の書きたい物語の方向がハッキリしたように思います。


 転載してみたら全部で7千文字弱となりましたが、これをなろうに掲載している時は、全く何の反応も無く、誰も読んでいないかもしれないと思いながらも、ひとりぼっちで言い訳を続けていました。切ない思い出です。


 でもきっと作品が増えるごとに、まずテーマを据え、バシッと書いたプロットに沿った物語が書けるようになり、細かいエクセルの表とかも作れるような書き手に、メガ進化するはずです。

 そんな日を夢見て、さぁ、次は何を書こうかな。


 エッセイなのに4千字越えになってしまいました。お付き合いありがとうございました!!

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