狼からのお願い02

「はい。魔王様。察して頂いて恐縮です。


 ここ10日ほどの、この短期間でバックス伯爵の独立を説得にて鎮静、伯爵はすでに高らかに宣言をされていましたから、それに呼応する勢力があったかもしれません。そうなると国を二分する様な大規模な内乱もあったかもしれません。


 そして、4公爵について儀式による忠誠を再確認された手腕。本当にお見事でした。


 以前の魔王様もとてもお強く行動力がありましたが、今の魔王様はそれに加えて戦略的というか、高い知性や知能を感じておりました。


 これが、中身が人間と入れ替わっているということであれば納得できます。」


「ちょっと、そんなにべた褒めするではないわ! 照れるではないか!

 そんなことよりも早く要件を言うのじゃ!」


 狼の一方的な褒め言葉に気恥ずかしくなったパールは、耳を赤くしながらさっさと要件を言うように促した。



「も、申し訳ありません。そのようなつもりはなかったのですが………。前置きが長くなりましたが、そんな魔王様のお力を拝見させていただいてのお願いとなります。


 私の種族の話となります。ドラゴンの住んでいる森と人間の国とバックス伯爵の領土を跨いでそのあたりに生息しております。


 そして、人間からもドラゴンからも迫害を受けている状態でして、このままですと種族の存続の危機なのです。これを魔王様のお力でなんとかすることはできないでしょうか?」


「なっ? 思いのほか重たい話が来たのう。しかし、おぬしは確か群れを追い出されたのではなかったのか?


 おぬしがケガをしておった時もひとりじゃったではないか? 元いた群れなんぞ別にどうでもよかろうて?」



「確かに言われることはごもっともです。私は七尾もある狼。強力な魔力や人間並みの知能もあり群れの中でも化け物のような目で見られていました。


 それゆえ、群れを離れることにしたのですが、それでも一族のことは気になるところです。狼の習性といいますか、本来は仲間の結束を第一に考えます。離れていてもその気持ちは残っているのかもしれません。」


「なるほど。人間だった時の記憶やパールの記憶を思い返しても、ワシには理解できん感情じゃな。


 しかし、おぬしがそういうのであれば協力しようではないか。まあ、ドラゴンどもに関してはどっちにしても何とかするつもりじゃったからな。


 で、ちょっと確認じゃが、群れとして特段人間やドラゴンと敵対しているわけじゃなかろうて?」



「はい。全体的に知能は高いとはいえ所詮は狼です。人間もドラゴンに対しても敵対しているということはありません。というか、そのような高度なことはできません。


 しかし、レッドドラゴン、ブルードラゴンの内部抗争によく巻き込まれている状況で、多くの仲間が命を落としております。それに恥ずかしい話で私も抗争で不意を突かれる形になり大怪我を負ってしまいました………。


 人間たちに関しては我々の毛皮が欲しいらしく、それはもうあの手この手で捕まってしまうのです。これもなかなか抵抗が難しい状況です。」


「むむむ。なるほど。う―――――――ん。


 しかしこの状況、ワシに何かできるじゃろうか? せっかくべた褒めしてもらったばっかりじゃが、急に言われても何も思いつかぬな。


 無茶ぶりというやつじゃなあ。であれば逆に狼のほうから何かしてもらいたいということは無いか?」



「急に無理難題を持ち掛けてしまい申し訳ありません。確かに魔王様の言う通りです。


 そうですね、取り急ぎ人間に関しては、あまり人間の領土へ行かないようにしていることと、また、魔王領、ドラゴンの森には人間もあまり近づいて来ませんので切羽詰まってはいません。


 最近はドラゴンの内部抗争の被害のほうが甚大かもしれません。こちらを何とかするだけでも群れはかなり安定するかもしれません。」


「ドラゴンかあ………。あいつら最近どこにでも迷惑をまき散らしておるよな。


 まあ、調子に乗り過ぎておるのでワシ自らがお灸を据えてやるつもりではおったんじゃがのう。それでうまく解決してくれれば良いのじゃが………。


 ドラゴンとの交渉については約束するので、この件はいったん保留で良いかのう? その後もおいおい対策を考えていくということでどうじゃ?」



「承知しました。その対応で充分でございます。親身に検討していただきありがとうございます。」


「ところでじゃ。おぬしのお願いを聞いてやる代わりと言っちゃなんじゃが、ワシからも良いかのう?」



「はい。なんでしょうか?」


「いやな、この国全体として深刻な人手不足というのがあるじゃろ? おぬしはいろいろと能力が高そうなんで、ワシらと一緒に働いてもらうことはできんじゃろうか?


 もちろん、ちゃんと報酬は出すからな! そこはホワイトな魔王の国家な!」



「それはもちろんです。もともとは魔王様に大怪我をしていたところを助けていただいた身であります。


 それに仲間のことも親身になってくださるのであれば断る理由もありません。私の能力を存分にお使いください!」


 狼は好意的に笑顔で答えた。




「おおおぉ! それはありがたい話じゃ! 助かるのじゃ! で、具体的に何ができるんじゃろうか? 戦闘能力は?」


「それなりにはいろいろとできると思っておりますが、魔王様の配下の方は優秀な方が多いのでそれに比べるとさすがに劣ります………。


 秘書の能力はパステル様ほどテキパキと作業をすることができるかわかりませんし、ギジ様に比べるとやはり戦闘能力は………。


 ちなみに戦闘能力は、以前は後れを取りましたが、本来はドラゴンと1対1であれば対峙できると思っております!」



「あ、そうだ! これからギジにところへ行こう! 奴は戦闘能力を数値で視ることができると言っておったからな。


 あと、ついでに模擬戦もしてみてもらえれば力量もわかるというもの。その後何をするか決めようではないか。」


 そう言って、パールと狼のふたりは瞬間移動でギジのところへ向かった。



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 思わず茶番のような戦闘をこなし、それでもバンパイアたちの心を掴んだ魔王様。

 次に目指すはドラゴンとの折衝!

 かと思いきや、思わぬイベント発生。

 これまた鉄板の展開だが!

 これはもうブクマも☆も付けるしかありませんね!

 いや、付けるでしょ?☆もブクマも?

 いえ、ぜひともめちゃくちゃお願います。ほんとにお願いします!☆とブクマ!


 この後の展開もぜひとも楽しんでいってくださいね!




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