第11話 朝の遭遇……
それから、数時間――。
俺はまた花音ちゃんに大量に飲まされた……あの小学生、本当にキャバ嬢の才能に満ち溢れている……そのうち、俺ドンペリとか頼まされるじゃないか……? そして、借金にまみれて人生終了するんじゃ……という、謎の恐怖感がある……。
「ふぁぁぁぁ……」
さんざん飲んでそのまま気持ちよく寝た次の日の朝6時――。
俺はまた二日酔いで目を覚ます……
「あ、頭痛い……」
頭を刺すような頭痛と……。
「あー俺の休みもあと2日か……なんていうことだ」
休みが終わる絶望感が押し寄せてくる……この世から仕事なんてなくなればいいのに……。
「………………」
ま、まあ、休みの日に休みが終わる絶望感に支配されてもいいことはない。今日は休日を楽しもう……。
今日も花音ちゃんのと出かける予定だし。
「……シャワーでも浴びるか」
そんなことを考えながら、寝ぼけ眼で部屋の扉を開けると……。
髪の妖怪に出会った。
「ひっ…………!!」
「………………」
心臓が止まるかと思った……だって寝ぼけ眼で扉を開けたら、リアル金髪貞子がいるんだもん……お化け恐い……。
しかもリアル貞子の髪は濡れており、まさに井戸から出てきたみたいだった……。
「………………馬鹿」
すると、俺の反応が気にくわなかったのか、お化け……じゃない、澪ちゃんは自分の部屋に入っていった。どうやら風呂に入った後らしい……。
そして、扉を2センチぐらい残して、閉める。な、何? そのポジションでしか話せないのか?
「そ、その反応はいくら引きこもりでも結構傷つく……お化け扱いはよくない。よくないよぉ…」
「いや、なら髪切れや……」
俺がそう言うと何故か澪ちゃんがソワソワとし始める。あ、あれ? 何か気に触っただろうか……。
「えっと……政吉は……髪が短い方が好み? ごにょごにょ…べ、別に政吉さんの好みはどうでもいいけど……まあ、同居人の好みぐらいは把握しておくべきと……ごにょごにょ」
おっ、初めて名前を呼ばれた……。
なんか、感動だな……ちょっとは仲良くなれたのかもしれない……大半はごにょごにょ言ってて聞き取れなかったけど……
それと……これは髪を切らせる大チャンスなのかもしれない!! もう、家の中で澪ちゃんを見かけて心臓が止まる思いをしなくても済むかも!
「ああ、刈り上げろとまでは言わないが、澪ちゃんは肩ぐらいまでの長さが似合うんじゃないか?」
まあ……髪のせいでまともに顔を見たことがないから、似合うかは実際切ってみないとわからないんです……とは、言えない……。
「そ、そう……うへへ、そう? 考えておく……あと……」
澪ちゃんは嬉しそうに笑うと、最後いいごもる……なんだろう、適当に助言したからか……罪悪感がすごい。
そんな俺の罪悪感はよそに、澪ちゃんはぼそぼそと喋り始める。
「き、昨日は変な人追っ払ってくれてありがとう……」
「ん? あー、支援団体のおっさんのことか……」
「うん……」
「あんな怪しい奴と会わせるわけないだろ…? まったく……なんなんだあいつは」
今後も来るようなら、マジで警察に連絡しよう……まあ、支援団体が本物かどうかの確認をしてからか……くそっ、名刺ぐらい貰っておけばよかった。
ん? あれ……?
「あれ? 何で俺が支援団体のおっさんと話したこと知ってるんだ?」
「………………お休み」
扉が閉められた……おい、都合が悪くなったからって逃げるな。というか、今から寝るのかよ……。
まあ、インターフォンの受信機から、澪ちゃんの部屋は近いし、たまたま聞こえたのか……ふっ、盗み聞ぎしたことを怒られるとでも思ったのか? そのくせ、お礼を言ってくるって……律儀というか……可愛いというか。
俺はそんなことを考えなら、シャワーを浴びることにした。
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