第4話 寝起きの小学生は最高だぜ!

   ◇◇◇


 それからどうやって澪ちゃんを部屋から引きずりだそうかと、リビングでだらだらとテレビを見ながら考えてると……。


「ふぁああ、政吉さん、朝早いんだね……」


 眠そうな花音ちゃんが目をこすりながら、リビングでやってきた。

 どうやら、まだ思考が働いていないようで、朝は苦手みたいだ。


「シャワーでも浴びてきたらどうだ?」


「そうするぅ……ふぁぁ……そういえば、さっき声がしたけど、お姉ちゃんと話したの? ……お姉ちゃんが初対面の人と口をきくなんて、意外だなぁ……ふぁあああああ」


「そうなのか? ……まあ、盛大に第一印象が最悪になった。くっそ嫌われてると思うけど」


「………政吉さん、何したの……? まあいいや、後で聞くぅ。ねむぅ」


 そう言いつつ、花音ちゃんはパジャマを脱ぎ始めた……おい。


「ここで脱ぐな。脱衣所行けよ……」


「いやだなぁ。わざとに決まってるじゃん~。政吉さんがドキドキするかと思って。ふふっ、こんなこと冗談でも他の人にはしないんだから、感謝してよね!」


「はぁ? 小学生にドキドキするわけないだろ……あと、勝手にしといて恩着せがまし過ぎるだろ……」


「ちぇ~。政吉さんはロリコンじゃないのかぁ……」


「…………………」


『失望した~~』みたいな雰囲気で風呂場に行く花音ちゃん。

 いや、何で残念がられてるんだよ……ロリコンだったら、お前やばいだろ……。


「そうだ……出かけるの澪ちゃんにも声をかけよう」


 こういう地道な声がけが、脱引きこもりになるんだと思う……まあ、余計なお世話だとも思うが。

 引きこもりからしたら、こういうのうざいのかなぁ……まあ、話しかけて反応を見てみよう。


 そんなことを考えながら、立ち上がり、澪ちゃんの部屋の扉をノックする。


「澪ちゃん~? 花音ちゃんと出かけるんだけど、澪ちゃんも来ないか?」


 返事はなかったが……しばらくすると、また2センチほど扉が開いた。

 相変わらず金髪に覆われていて……妖怪にしか見えない……俺は恐怖心に耐えながら、言葉をつづけた。


「えっと、買い物とか行くつもりなんだけど……」


「……ろ、ロリコン? 花音に手を出しちゃダメ」


「………誤解だ。俺が好きなのはおっぱいがある大人の女性だ。小学生に興味はない」


「う、うっわ……おっぱいとか……うっわ……うっわ……ただのえっちじゃん」


「ボソボソ言うな! 文句があるならはっきり言えや!」


「きっも」


「はっきり悪口を言えとは言ってない! 泣くぞ! おっぱい好きで何が悪い!」


 いや、俺はほぼ初対面の女性に何言ってるんだと……? とは思わなくもないが、しょうがないおっぱいは男のロマンだ。

 と、心の中で言い訳をしていると……澪ちゃんは手を差し伸べてきて俺に五千円札を渡す。


「…………え、駅前のたこ焼き屋で12個入りと2リットルのお茶、あとカップラーメンをおつりで買えるだけお願い……」


 澪ちゃんにぼそぼそと、それだけ伝えられると、扉をしめられた。


「…………………」


 この扉、チェーンソーで切り刻んでやろうか……?


「はぁ…………」


 まあ、今は話してくれるだけで、いいか。

 会話はできるみたいだし、部屋から引っ張り出す機会もあるだろ……多分。


   ◇◇◇


 澪は暗い部屋でため息をついた。

 

「い、いきなりお化け扱いされたとは言え……さすがに私の態度悪いなぁ。お化けの様に髪が長いの事実だし……」


 花音が政吉に懐いているは意外だった……


「か、花音……小学生とは思えなぐらい警戒心強いのに……特に男の人には……それがほぼ初対面で二人で買い物行くなんて……政吉さん……だっけ? やっぱり、いい人なのかな? 『昔会った時』も……」


 そこまで考えて首を振る。


「ううん、私には関係ない話か。う、うへへ、私の世界はこの部屋だけなんだし……そ、外の世界のことなんて考える必要ないし、うへへへ」


 そう呟いて、澪は考えることを辞めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る