第3話 お化けとの出会い

◇◇◇


「頭痛い……」


 翌日の早朝俺は自分の部屋にて、頭痛で目を覚ました。

 時計を見ると時刻は6時半、いつも起きる時間だ……仕事がなくてもいつも通り起きてしまう。社畜の悲しい性質だ……。

 

「…………あーくそぉぉ。頭痛い。くっ、飲みすぎだろ」


 このぐらいだったら、動けないほどではない、なんなら働ける。

 でも……俺、自分で言うのもなんだけど、結構酒強いんだけど……どれだけ飲んだんだよ。


「あのキャバ嬢小学生、酒を飲ませるの上手すぎだろ……」


 俺はため息をつきながら風呂場に向かい、シャワーを浴びる。

 すると、頭痛は少しやわらぎ、思考がクリアになっていく。


「はぁ……妹か。まさかあんな美少女が義妹になるとはな……人生何が起こるかわからんな……」


 嬉しさはもちろんあるが……戸惑いの感情が大きい、『義妹たち』はいろいろ複雑みたいだしな……。


 さて、これからどうするか……花音ちゃんと出かけるのは昼だし、まだ寝てるよな。


『ゴソゴソ……』


 そんなことを考えながら、自分の部屋に戻ると、右隣の部屋から物音が聞こえた……。

 えっと……花音ちゃんの部屋が左隣なので、右隣は噂の引きこもりの姉、澪ちゃんだろう。


 花音ちゃんの話だと、歳は17歳で、現在最強の引きこもりニートらしい……。

 うーん、高校ぐらいは出た方がいいと思うが……昨日義兄となった俺が言うのもうざい気がする……。

 深い事情もまだ知らないしな……だって花音ちゃんに……。


『お姉ちゃんのことはお姉ちゃんに直接聞いてね。会話の積み重ねが、人間関係をよくする近道なんだからね』


 と、ウインクしながら言われた。

 あの子、本当に小学生か……? 言葉から人生経験が溢れすぎだろ……。


 まあ、なんにせよ、早めに顔合わせをした方がいいか。

 ……怖い人だったら、どうしよう。


 俺は多少緊張しながら、隣の部屋に向かい、軽くノックする。


「あー、すまん、澪ちゃん? 朝早く申し訳ないんだけど……少し、話をしたいんだけど……」


『ガタン……!』


 ……今机か何かに身体をぶつけたような音が聞こえた……慌ててる?

 バタバタして、やがて扉が2センチほど開く。そこから全身髪に包まれた女がこちらをのぞき込む。


「………澪です。どうも」


「え? う、うおおおおおおおおお! お、お化けええええええええええええええ!?」


 大変失礼だと思うけど……しょうがない。

 2センチ開いた扉から見えたのは、160センチぐらいの少女なのだが……金髪の前髪がとてつもなく長く、膝ぐらいまである……マジリアル外国人貞子だ。


 自慢ではないが……俺はホラーが大の苦手だ。この世にある全ての心霊スポットを全て爆破して、更地にしたいと思っているほどだ。


 むしろ、悲鳴を上げなかった俺を褒めてくれ……いや、悲鳴は上げたか……。


 澪ちゃんはそんな俺を見て、なんかむっとされた気がした。髪で表情が見えないけど……


「ふん……花音をよろしく」


 可愛らしい声で、そう言うと、扉は閉じられた……普通にやっちまった。

 いくら何でも初対面の女の子にお化けはダメだろ……。


「……み、澪ちゃん、悪い。俺、お化けとか苦手で……」


『私……お化けじゃないし』


 と、かすかに扉の中から聞こえた。

 いや、お前、自分の容姿見たことあるか? 貞子と闘える容姿をしてるぞ……?


「それはわかってるんだけど……」


『私……お化けじゃないし』


「いや、謝りたいから、ちょっと話を……」


『私……お化けじゃないし』


 やっべ、めっちゃ根に持たれてる。じゃあ、髪を切れ……。


「…………………」


 人は初対面の印象が大事という……まあ、見事に失敗したわけだ……

 ……これは一旦、引こう……詰めても逆効果だ。


『私……お化けじゃないし』


 まだ、言ってる……マジで髪を切れや……


「…………………」


 でも、なんかあの子の雰囲気……どこかで見た気が……まあいい、俺の目的は決まった。


(……絶対に髪を切らせよう! あんな髪の妖怪と一緒に暮らせるか! 夜トイレであったら漏らすわ!)


 俺は心の中で固く決意をした……。

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