第19話
僕は初めて、
現在の僕のレベルで踏み入るのは、かなり危険な領域であるのは間違いない。今の森の状況を踏まえれば尚更である。
ギルドの
ミーシャさんの話を踏まえれば、当然かもしれないけれど。
僕は、その中の一つであるコブリン討伐の依頼を選び、ここへとやって来ていた。
ただ、前回のように、ゴブリンに【
なので、もっと強力な魔獣を求めて森のさらに深くへと僕は踏み込んできたのだ。
めちゃくちゃ怖いな。
微かな物音にも、大げさに反応してしまう。
対するミュウには、あまり怯えている様子は見られない。ギルドにいた時とは大違いだな。
ビクビクしなから、森を進んでいた時である。
……いた。
そのブタのような顔をした二足歩行の魔獣は、僕の十メートル程前方を歩いている。身長は僕の軽く倍以上はあり、長い棍棒を片手に木々の間を悠然と闊歩している。
オークだ。
生で見るのは初めてである。
僕とミュウはオークの進む方へ先回りし、大樹の陰に身を潜めて待ち伏せする。
心臓はもうバックバクの状態だ。仮に見つかれば、秒で撲殺されるだろう。あんな棍棒のフルスイングを食らったら、僕の身体はどうなってしまうだろう……。
想像するのはやめておこう。
オークは、何ら周囲を警戒心する事もなく、僕の隠れる木のすぐ横を通過する。
息を止め、僕は背後からオークに迫る。
もう、心臓が口から飛び出そうだ。
その巨躯の腰の辺りに、僕は両掌を押し当てる。
「ダイブッ!」
さすがオークである。
見た目こそ難ありだが、強えッ!
ゴブリンは、ボッコボコにできた。ていうか、本気出せばワンパンである。
なので手加減して寸止めにする。トドメは僕自身の手で刺すためだ。まあ、何匹かは手加減しきれず殺してしまったが。
ウルフにも遭遇したので、試しに挑んでみたらこちらも一撃で屠れた。
きょうの討伐対象ではないので、倒しても報酬は貰えない。ただ、ウルフの身体は素材としての価値がゴブリンよりずっと高い。一匹くらいなら運搬も可能だろう。横取りされないよう、茂みの中に死骸を隠しておき、後で回収する事にした。
一つ問題があった。
このオーク自身は、どうしよう?
【
オークも今回の討伐対象ではないから、ムリして始末する必要はないけど……。
できれば倒しておきたい。僕のレベルを上げるためにも。
思いついたのは、あまり気の進まない方法だけど……、やるか。
ゴブリンの一匹が装備していた剣を、僕は拾い上げる。剣は古くて、手入れもまったくしていないのだろう。表面は赤錆だらけ。それが、余計に僕のやる気をそぐ。
けど……、やってやる。
剣先を自らのでっぷりしたわき腹に突き立てる。
東方人の間で伝統とされている、いわゆる「切腹」である。
ていっ!
力を込め、剣を腹にぶっ刺す。
そのまま、思い切り刃を横に引いた。
いでえええええぇッ!
念のため、脚や腕なんかも傷つけておいた。ハタから見れば、オークが
ハア、ハア……。こんくらいダメージ与えとけば、だいじょうぶか?
もはや立っていられず、膝をついてそのまま地面に倒れてしまう。
『だ、ダイブアウト』
◇
【
時間制限て、あるのだろうか?
一定時間が経過したら、強制的に「ダイブアウト」させられるという縛りがある可能性も否定はできない。
ぜひとも、確認しておくべきだと思った。
その実験するため、僕は魔獣討伐を一日休む事にした。
まず、町中でうろついていたノラネコを一匹、宿の部屋へ連れて来た。
全身、灰色の毛でモッフモフ。ノラのくせに、少々肥満気味のヤツだった。
部屋のカギは閉めておく。
で、ベッドに横になった状態で、僕はその灰色ネコに【
「にゃああぁ」
さて、この状態でいつまでいられるか。
ミュウは最初、見慣れぬ生き物にすごく警戒している様子だったが、中身が僕だと理解すると手で触れたりし始めた。
やがて、その毛並みが気に入ったのか、嬉しそうにモフモフしてくる。
て、よせよ。くすぐったいから。
その後、毛づくろいしたり、窓から屋根に上ってみたりしながら一日じゅう宿の部屋で過ごした。
ごはんは予め買っておいたビークサンドである。ネコの身体だと半分くらいでお腹いっぱいになってしまったので、残りはミュウにあげた。
日が暮れても、僕はネコのままだった。
【
もっと長時間、【
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