第41話 好きと嫌い

 好き嫌いというのはいいも悪いもなく、問答無用で、誰だって、好きなものは好きで嫌いなものは嫌いである。


 まれに、好き嫌いが変化して、昔は好きだったけど、今は嫌いになったというのもあれば、その逆もあるかもしれないが……


 食べ物なら、肉が好き、刺身が好き、その反対に、シイタケは嫌いとか、ニンジンは嫌いとかはあっても食べなければ済む話だ。


 ところが人間相手だとそうはいかない。


 なにしろ、嫌いということを自覚すると、その人と会いたくないとか、話もしたくないとかになる。


 したがって、嫌だな思う人が、同じ職場や学校にいれば、嫌でも顔を合わせたり、話したりしなければならないから、食べ物とはえらい違いであり、ストレスの元でもあるに違いない。


 じゃ、嫌な人どうつきあうか……


「かわいさ余って、憎さが百倍」とあるように、かわいいと思う気持ちが強ければ強いほど、いったん、憎んでしまうと、その気持ちが強くなってしまうということばがある。


 好きという気持ちの裏側が、嫌いという気持ちであるから、「好き」があるから「嫌い」があり、「イイ」があるから「イヤ」があるのである。


 つまり、比較相対の問題であるから、比べなければいいのである。


 イヤな人を、知らず知らずに、誰かイイ人と比べていないかということであり、そういうイイ人と比べたら、イヤになってしまうのは当たり前である。


 その人しかいないとなれば、まあ、その人を好きになれとは言わないが、何かは見えてくるはずである。


 好きなものをたらふく食べれば、比べる理由もなくなって、嫌いなシイタケも食べてみるかという気持ちになればしめたものである。


 「好き」を、もっともっと充実させることで、「嫌い」は薄れていくのであって、「好き」もないのに、「嫌い」だけがあることはないのである。


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