第38話 人間と宇宙

 人間は宇宙の一部であるということだが、自分と宇宙は本当につながっているのだろうか。


 宇宙がどれだけ揺れ動いても、自分は揺れ動くことなんてないし、今、揺れ動いてるとしたら、それは宇宙じゃなくて風が吹いてきただけだなんてね。


 だから、宇宙は宇宙、自分は自分だ。


 もし、人間が宇宙の一部というなら、その証拠をあげてみてよと言っても、そんな実感はない。


 宇宙線が人間の身体を貫いて、降り注いでいるっていうが、そんなのは見えないし、空気を吸わないと生きていけないけど、空気も目には見えない。


 二つの別々の物体が、どうやってつながるというのか、相手は相手、自分は自分なんだから、このようにして、つながっているんだということを誰にも分かるようにしてほしい。


 じゃ、こう考えてみるか、空気は見えないけど全部なくしてみようかと。


 そんなことしたら、即死ぬ。


 人間は空気を吸って生きているのだから、人間と空気にはつながりがあるじゃないかと言っていいが、つながりという言い方が良くないかもしれない。


 つながるというのは結んだり、しばったり、組んだりすることだから、ちがう言い方をすれば、人間は空気をがっちり自分にしばりつけて逃げられないようしているということだ。


「逃げないでくれ!自分は死んでしまう!」


 と言ってるのは人間だ。


 そうなると、太陽だってそうだ、もし太陽がなかったら真っ暗闇で凍死する。


「どっかに逃げないでくれ!自分は死んでしまう!」


 このように、空気、太陽の二つだけとっても、しばりつけるように固く、そばにいてもらうように願っているのは人間のほうだ。


 だが、人間は慣れてしまっていて気づかないが、逃げないように、しばりつけるようにして、そばに置いておかないと困るものが、宇宙(環境と言い換えてもいいが)には、たくさんあるのだ。


 だから、宇宙は宇宙、自分は自分だなんて、とても、言いきれないほど、人と宇宙は一体となっている。


 それでは、自分以外の人間についてはどうだろう。


「どこかに逃げないでくれ!自分は死んでしまう!」


 と、言えるくらい一体化しているだろうか?


 自立する前までの人間だったら、親にはそう言えるだろうが、自立した後は、そこまでは思わないかもしれない。


 但し、愛情でしっかりむすびついていればそう思うだろう。


 兄妹、親戚、他人はどうだ。


 親代わりでなければ、いなくても生きてはいけるが、人間は、たった一人で宇宙に生きて何になるだろう。


 だから、自分を置きざりにして逃げないでくれというだろう


 つまり、自分の心の中に宇宙があるなんて、生易しいことではなく、人間は宇宙というものにしっかり結びつけられて生きているのではないだろうか。


 それほど、人間と宇宙は密接なのである。

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