第33話 ひとの温度

「がんばるぞ!ファイトだ!熱血だ!情熱だ!燃えろ!」


 何かに挑戦するときは、こうした熱い思いが大切である。


 が、そうでない姿を見せたとすれば……


「なに、冷めてんだ!熱意が感じられない!」


 と、冷ややかな目で見られてしまう。


「あんまり、情熱を表に出すのは苦手でして……」


「そうか、じゃ、ちょうどいい温度でがんばれ!」


 こういった、熱湯を水でうすめるような言い方というのも何か変である。


 じゃ、こういうのはどうか……


「燃えるときは燃えろ!冷めるときは冷めろ!」


 ほう、状況によって使い分けるってやつね……


 いずれにしても、人間には一定に保たれた体温がある。


 それゆえ、熱意をもって何かに取り組んでいるからといって、体温が急上昇するわけはなく、そんなことになれば、ぶっ倒れてしまうのがおちだ。


 つまり、どんなに歯ぎしりして力んだからといっても、体温はちゃんと調節されるのが人間だ。


 それに比べて、は虫類や魚は、まあ、かつては冷血動物などと言ったが、自分で体温を調節することはできないから、低い温度の場所にいれば動けないし、高い温度のところにいれば、それに気づくことなく死んでしまうのだから。


 情熱というのは表に出しても出さなくて、何か実現したい希望があるならば、あったほうがいい。


「頭を冷やして考えろ!」


 但し、こんなふうに忠告されることもあるからね……自らも、何度も身にしみている忠告だ。


「冷静」ということばにしたって、心の冷たい人間を批判することばじゃなくて、常に自分の平常心を保つのに必要なことばである。


 つまり、熱に浮かされやすいのが人間なのだ。


 だから、そこに落とし穴があることを肝に命じなければならない。


 世界のどこかの指導者には「頭を冷やして考えろ!」って言ってやりたいものだ。


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