第26話 話すことと聞くこと
人の話を聞くことと、自分から話をすることのバランスをとることは意外に難しい。
老人は、きっと、それまで自分が経験したことを喋りたくてしょうがないのだろうか、同じ話を何度もする。
「それって、前にも聞いた」と思っても、指摘するのもおとなげなくてまた聞かされる。
一方、若者は、知識や経験の未熟な自分のことを喋るより、まずは、周りの人たちの話を聞いて、いろいろなことをせっせと吸収することに励もうとするのに違いない。
だが、聞いてばかりいて、自分の意見を言わないと注意を受ける。
「もう少し思ってることを言っていいんだよ」
やさしい先輩はそう言ってくれるが、きびしめの先輩はそんな言い方はしない。
「黙ってないで、もっと、自分の意見を言えよ!」
そう言われても、今は自分から話をするより、少しでも、先輩方の意見を聞きたいからと思っているのだが……
それじゃ、自分の言いたいことをどんどん言って見るか……
「あいつ、生意気なんじゃないの!口出しするのは十年早いよ!」
と、返ってくるから、結局、喋っても、喋らなくても、何かしら言われるから、話すことと聞くことのバランスをとろうなんて、しょせん、無理に決まってると思ってしまう。
だが、一つだけ確実なことがある。
それは、相手が何を言いたいのか、全身を耳にして聞く、聞き取る、理解するというのは、絶対、間違いのない行為である。
そして、理解したというサインとして、または、聞き取りましたよという反応として、自然とことばが出たとしたら、それは、まぎれもなく、間違ってはいないのだ。
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