第18話 猫だけの星
『猿の惑星』という映画は衝撃的だった。
その惑星では、人間はことごとく奴隷にされ、ひどい目に遭わされるが、もとはと言えば、先にサルをいじめたのは人間だから仕方がないらしいのだ。
だが、『猫だけの星』には、まるでそんなことはない。
猫は徹底した平和主義者だから、ネズミを食べることはあっても、アカの他人を奴隷にしようなんて、間違っても思わない。
ついでに言っておくが、地球にいる猫はすべて猫だけの星の出身であって、科学の進んでいるこの惑星からは、こともあろうに、UFOを操縦してやって来ると、目の届かない屋根裏に駐車している。
おまけに、ご主人様の目を盗んでは、こっそり、日帰りで帰省しているというからおどろきだ。
「うちの星では、戦争を始めたから、危なくってしょうがないよ」
「たいへんね、うちの星では犬の方を大事にしようっていうバカな将軍様が出ちゃってさ」
こうして愚痴り合うと、すっかり、すっきりしてまたもとの星へ帰っていくことを繰り返しているらしい。
さらに付け加えると、たまに、ご主人様のご機嫌が斜めになって、八つ当たりされることがあると、そういう時は猫だけの星にいっしょに連れて帰って飲めや歌えの大騒ぎだ。
「ずっと、居ていいですよ」といくら引き留めても、二、三日いれば完全に癒されてしまって、全員が漏れなく「明日から頑張る!」と言って帰ってしまうのは、何とも不思議なものだ。
とは言うものの、猫だけの星のことがばれてはまずいので、特注の忘却薬を飲ませて、惑星での思い出はすべて消し去るきまりになっている。
そうした平和なこの惑星にも、わずかながら問題もないわけではない。
およそ、地球にいる猫の種類は三百種と言われるが、猫だけの星には、なんと千種類もの猫がいて、おまけにプライドがすこぶる高いときている。
「うちの仲間がいちばんに決まってるにゃ」
そう言ってケンカになるが、「猫は三日で忘れる」という地球での分析が当たっていて、三日もすれば忘れるから、大きな問題にはならないわけである。
宇宙ってほんとに広いものだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます