二人の娘
※アレックスとレイチェルの娘『ララ』が中心です。
※第51話『大団円』のララ視点になっています。
「ねぇねぇ、お姉ちゃん」
お父さんが出て行くとリリーが私の体を揺すった。
「なに? 起こさないでよ……」
「お父さんとお母さん、何かするみたいだよ」
「…………」
妹のリリーは目を輝かせた。
何かする、とは言っているけど、リリーはお父さんとお母さんがすることに気付いている。
私は親の情事なんて見たくないんだけど…………
お父さんはリリーのことを純粋な子供だと思っているみたいだけど、もう手遅れだよ……
それにリリーの厄介なところは、私と違って興味で動いてしまうところだ。
私は自分でエロいことを言っている自覚があるけど、リリーは私が注意していないとすぐにボロが出ちゃう。
さすがに七歳のリリーがお母さんみたいなことを言い出したら、お父さんは絶句するだろうなぁ。
だから、私が目立つことを言って、お父さんの意識を逸らしている。
言葉は選んでいるつもりだから、お父さんは「少しませているな」くらいしか思っていないはず。
今の所、お父さんは騙せているけど、お母さんにはバレている気がする。
だって、お母さんはあれで勘が良いし…………
「大人には色々あるんだよ。子供は寝る時間だよ。…………って、リリー?」
私が何を言っても無駄だった。
リリーは部屋から出て行ってしまう。
私も追いかけて部屋を出る。
興味だけで動く私の妹はお父さんとお母さんの部屋のドアを少し開けた。
あ~~あ、そんな不用意にドアに開けたら…………
直後、ドアがガバッと開いた。
私は咄嗟にリリーの前へ立つ。
お母さんと視線が合うと苦笑された。
「騙されたみたいだよ」
お母さんがお父さんに言う。
「ねぇ、お母さんたちは裸で何をしていたの?」
怒られると思ったリリーが咄嗟に純真無垢な子供を演じた。
いやいや、ここへ来ておいてそれは無理があるよ、私の妹!
も~~、しょうがないな。
「それはね。私たちの妹か弟をつくっていたんだよ」
私がまた汚れ役をしないとね。
だって、姉は妹を守るものだから。
「裸で抱き合うと子供が出来るの? グレンお兄ちゃんは好きな人同士で一緒にいると子供が出来るって言ってたよ?」
「…………」
う~~ん、リリーはまだ裸で抱き合うことと子供が出来る仕組みが繋がっていないんだ。
お母さんの持っている小説にはその辺の説明、ちゃんとは出てこないもんねぇ…………
さてとリリーがこれ以上、変なことを言わないように私がこの場を掻き乱さないとね。
「う~~ん、間違っていないけど、一緒にいるだけじゃ駄目なんだよ。子供が出来る為にはね…………モガガ……」
お父さんが急いで私の口を塞いだ。
「苦しいよ、お父さん」
「ララは手遅れかもしれないけど、リリーにはまだ純粋でいてほしいんだ」
残念、お父さんの愛する娘はどっちも手遅れだよ。
将来はリリーの方が酷いことになるかもね。
「お父さん、愛娘にそれは酷いよ?」
私はムーッとお父さんを睨む。
「いいから、早く寝なさい」と私たちに言った。
「えー、勉強の為に子供の作り方を私たちに見せてくれないのぉ?」
私はからかうように言ってみる。
お父さんは呆れているようだった。
「レイチェル、君からも言ってやってくれ」
お父さんはお母さんに私の対処を任せる。
いや、お母さんじゃ駄目でしょ。
「う~~ん、見せるわけにはいかないから、お母さんの本を貸すよ。それで勉強して」
ほらね。
「おい!」
お父さんはお母さんが私に渡そうとした本を掠め取った。
「そんなことをして欲しかったわけじゃないけど!?」
うん、そうだよね、お父さん。
「大丈夫だよ。純愛物を貸せばいいでしょ?」
違うよ。
そうじゃないよ。
「違う、そうじゃない!」
さっきからお父さんと意見が合うなぁ。
それにさ、九歳と七歳の娘に官能小説を渡そうとする母親がどこにいるのかな?
……あっ、ここにいたよ。
じゃあ、もう少し掻き乱そう。
「え~~、純愛物よりも私は女騎士さんが捕まって、堕ちる方が好き」
「…………」
あっ、お父さんが険しい表情になっちゃった。
これはさすがに怒られるよねぇ。
「…………リリー、君は早く部屋に戻って寝なさい」
お父さんが少し低い声で言うとリリーは怒られたと思って、
「うん、ごめんなさい」
と泣きそうな表情で部屋から出て行く。
ふぅ、これで今日もリリーの偽りの純真無垢は守れたよ。
「さてとレイチェル、ララ…………」
お父さんは私とお母さんに視線を向けた。
「えっ、まさか、ララに私たちの行為を見せる気になったんですか?」
お母さん……
私は私で「えっ、見せてくれるの?」と言ってみたりする。
「もちろん、これからお説教だよ」
「そ、そんな……」と私もお母さんは口を揃えた。
でも、お父さんがきちんとお説教を出来るかな?
どうせ、私とお母さんのペースになって振り回されるんじゃないの?
うん、試してみよう。
「あっ、お父さん、これは『今夜は寝かせないぞ』ってやつ?」
私が軽く冗談を言うとお父さんは本気で焦った。
「そんなわけないだろ!」と否定する。
「寝かせないのは私だけだよね?」
お母さん、発言はどうなの?
「君はララの前でそんなことを言わないでくれるかな!?」
結局、少しの間、私とお母さんは形だけの説教をされる。
お父さんは「水を飲んでくる」と言って、部屋を出て行った。
「ララ、リリーをあんまり庇うと甘える一方だよ」
二人のなるとお母さんに言われた。
やっぱりバレているよね。
「リリーの為、って言うよりはお父さんの為かな。リリーがお母さんみたいなことを言ったら、お父さんが絶句するでしょ?」
「ララ、あなたはお母さんをなんだと思っているの?」
お母さんは少し怒っていた。
「ちょっと非常識な人。だって、私がお母さんのお気に入りの官能小説を読んだって知った時、怒ったり、隠したりしないで『その本、面白い? 興奮した!?』なんて聞いてくるんだもん」
「だ、だって、お父様(フリード)には簡単に会えないし、本の感想を話せる人がいなくて…………」
「だからって私に聞かないでよ。言っておくけど、お母さんとお爺ちゃんみたいに官能小説の感想を言い合う親娘なんて普通はいないからね」
おじいちゃんの場合は自分で書いた官能小説を娘に読んでもらっていたのだから、一段階上の変態な気がする。
おじいちゃんも良い人なんだけどねぇ……
「ララ、あなたは最近、アレックスに似てきたよ」
「リリーがお母さんに似てきたからじゃないの?」
「その言い回しもアレックスみたいだよ……」
うううぅ……、と唸るお母さんを見て、私は笑う。
ちょっと非常識で面白いお母さん。
振り回されるお父さん。
そして、早い思春期が始まっているリリー。
それが私の大好きな家族です。
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