キャラクターオーディション

新キャラを出すか出さないか悩んだので、全員分書いてみます

全部で4人の予定です。とりあえず2人

興味ないかたは飛ばして読んでください



☆男の娘は魔法少女に負けたくない


 まずは聞いて欲しい。

 『稲妻いなづま透琉とおる』は、ただが好きなだけだ。

 可愛いものが好きだから、をしているだけ。


 だから、こういった状況は望んだものじゃない。


「お願いします。俺と付き合ってください!」


 真面目そうな青年が深く頭を下げる。

 告白だ。


 告白されているのは透琉。

 ピング色のショートカット。少し学生服っぽいワンピース。その上に亜麻色のカーディガンを着ている。

 見た目は完全に女の子。

 だが男だ。


 透琉は、『間違えて買い物しちゃった』くらいのテンションで言った。


「あー、勘違いさせちゃったかな?」

「……え?」

「私はね、可愛いものが好きなだけなんだ」


 透琉はくるりと回る。

 自分自身を見せつけるように。


「だから私は可愛くいたいの。自分自身を可愛くするのが一番楽しいでしょ?」


 透琉は上目遣いで、青年を見つめる。

 青年は、こういった細かい仕草にやられたのだ。


「だから別に、男の人が好きなわけじゃないんだよね。あ、可愛い人なら別だけど」


 要約すると『お前はタイプじゃない』。

 青年はがっくりと肩を落とした。


 透琉は萌え袖にした手で、青年の肩をぽんぽんと叩く。


「でも、可愛い私に恋しちゃう気持ちは分かるよ。私だって自分と付き合いたいもん」


 透琉はにひひっと、いたずらっ子のように笑った。


「ま、可愛くなったら出直してきてよ」




 

「むーん……」


 透琉は難しい顔をしながらスマホを見つめる。

 画面に映っているのは動画だ。

 魔法少女系探索者ハルジオンの。


「カワイイ、カワイイけど」


 透琉は可愛いものが好きだ。

 ハルジオンのことも可愛いと思っている。

 当然ながら好意的に思っている。

 だがそれと同時に、


「悔しい」


 透琉は自分の可愛さに自信を持っていた。

 一番付き合いたい人は誰かと言われれば、自分自身だと答えるほどに。

 だがハルジオンはもっと可愛いかもしれない。


 可愛いものを見れる嬉しさ。

 負けたくない悔しさ。

 その両方の感情が複雑に絡み合っていた。


「そうだ!」


 だが、透琉はこの問題への答えを見つけた。

 回答はとてもシンプルだった。


「ハルジオンちゃんよりも、私が可愛くなればいいんだ!」


 そうなれば、悔しくない。

 ハルジオンの可愛さも、わだかまりなく楽しめる。


「どうすればもっと可愛くなれるかな――ん?」


 廊下で人とすれ違った。

 中性的な顔をした青年だ。

 ピシッとした、自身にあふれていそうな姿勢で歩いている。

 だが、どこか不安そうな眼をしている。

 アンバランスな姿が、危うい魅力を出している。


(確か……『詩音先輩』だ)


 そこそこ有名な人だ。

 見た目はかっこいい。

 それに多様な属性を使いこなす。

 だけど威力はダメダメで、まともに戦闘もできないらしい。


(女装してくれたら似合いそうなのにな……)


 透琉とタイプは違うが、魅力的になるはずだ。

 そこで、ふと思いつく。


(自分と違うタイプの人をコーディネートしたら、なにか新しい道が見えるかも)


 通り過ぎて行った詩音を、透琉はジッと見つめていた。





☆妹弟子は追憶を切り裂きたい


 刀が好きだ。

 スラリと伸びた刀身は、とても効率的で無駄がない。

 あらゆる悪を切り裂くために生まれた武器だ。


 少なくとも、『剣崎桐乃けんざききりの』はそう信じている。


 ガッ!!

 鈍い音が道場に響く。

 二本の木刀がぶつかる。

 一度や二度ではない。

 なんども打ち合い続ける。


 これは練習試合だ。

 優勢なのは桐乃。


 黒い胴着姿で剣を振るう。

 その動きと共に、黒く長いポニーテールがゆらゆらと動く。


 その剣筋に迷いはない。

 常に相手の急所を狙っている。

 これが真剣ならば、殺す気の一撃を叩きこんでいく。


 相手をしている青年。

 『小峰刀夜こみねとうや』はやや苦しそうに、木刀をさばいている。


 桐乃は涼しい顔で木刀を振るっているが、刀夜のひたいには汗が流れている。

 二人の実力は明白だった。


 刀夜が振るった刀がスルリと受け流される。

 大きな隙だ。

 それを見逃すほど、桐乃は優しくない。


 桐乃の木刀が勢いよく振られた。

 ピタッと、それは刀夜の首に触れる直前で止められた。

 真剣であれば、首をはねられていた。


「……俺の負けだ」


 刀夜は悔しそうにつぶやいた。


「ずいぶんと腕を上げているようですが。まだまだですね」


 最近の刀夜はずいぶんと熱心に修業をしている。

 なにがあったかは桐乃は知らない。

 それに興味もない。

 都合のいい木偶練習相手が出来たくらいの感想だ。


「妹弟子に褒められても嬉しくないな……」


 桐乃は1年ほど前に、小峰家に出入りするようになった新参者だ。

 それよりも前から、『小峰楼雅こみねろうが』の教えを受けたいと願っていた。

 だが英雄である楼雅を師事する人々は多い。

 桐乃は、その多数の人々の一人でしかなかった。


 だが桐乃が『特別なスキル』を発現したことによって事態は変わった。

 桐乃は楼雅の目に留まり、小峰家に招かれることになった。


 現在では楼雅のお気に入りであり、もっとも熱心に修業をつけられている。


「失礼します」


 桐乃はそれだけ言うと、道場から出る。


 別に刀夜のことは嫌いではない。

 好きでもないが。


(だが、あれとするのかもしれないのか)


 桐乃はの楼雅の弟子たちの中では、もっとも実力がある。

 そして、もっとも実力のある女性が、次の当主の嫁に迎えられるだろうと言われている。


 少なくとも刀夜の母は、その実力を買われて嫁入りしたらしい。

 順当にいくならば、選ばれるのは桐乃だ。


 そして次の当主は刀夜。

 二人の婚姻は、半ば決まったもののような空気が流れている。


 桐乃も別に嫌ではない。

 そもそも男に興味なんてない。

 相手が誰だろうとかまわない。


 だが英雄である楼雅の娘になれるのは嬉しい。


 不満がない。

 だが、


「このまま行くと、刀夜様が後を継ぐのかね」

「そりゃそうだろ。他に人も居ないんだから」


 道場の裏手から声が聞こえる。

 他の弟子たちだろう。


「いや、詩音様が――」

「やめろよ。楼雅様に聞こえたら事だぞ」


 『詩音』。

 その名前は、小峰家のあちらこちらから聞こえてくる。


「桐乃の奴だっているんだから、問題ないだろ」

「でも剣の腕じゃ、刀夜様と桐乃の二人がかりでも勝てないだろ?」

「そりゃ……そうだけど」

「剣術を教えるだけならスキルなんていらないんだから、やっぱり詩音様に帰ってきて欲しいよ」


 二人がかりでも勝てない。

 その言葉に桐乃は歯噛みする。


 桐乃が小峰家にやってきて、剣の実力を発揮するほどに『詩音の影』が目立っていく。

 どれだけ頑張っても、『詩音の方が』『詩音なら』、その言葉がちらつく。

 桐乃が実力を上げるほどに聞こえてくる。


 楼雅でさえも、詩音の影を見ている。

 桐乃がどれだけ冴えた技を見せても、どこか残念そうな目で見てくる。


「そうは言っても仕方がないだろ。楼雅様の魔法嫌いは筋金入だ」

「なんでもいいから、詩音様が近接系のスキルを発揮してくれてればなぁ」


 つまり、どこまで行っても桐乃は代替品だ。

 本物の劣化品。


 詩音、詩音、詩音、詩音。

 どこまで行っても、どれだけ努力しても、その名前がついてくる。


「私の方が、強いはずだ――!」


 もう、うんざりだった。

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