第4話 取り合い



 日曜日。

 公園を散歩する私の耳に、女の子たちの言い争う声が聞こえてきた。


 「これは、あたしのモノよ!」

 「いや。あたしも使うの!」


 見ると、二人の女の子が、一本の竹ボウキを取り合っている。

 どちらも小学校の一、二年生といった年齢であろうか。


 公園に散っている落ち葉を、どちらが竹ボウキを使って掃き集めるかで、もめているようであった。

 公園の掃除でも、子供にとっては、楽しい遊びなのであろう。

 竹ボウキが一本しかなければ、ケンカにもなる。


 「ケンカしちゃだめよ」

 近寄った私は、二人の間に入ると、じゃんけんをし、二人が交互に竹ボウキを使うように提案した。


 「じゃんけん、ぽん」

 赤いジャンバーの女の子がグー。

 黒いハーフコートの女の子はチョキである。


 「早く、返してよね」

 ハーフコートの女の子は、渋々竹ボウキを渡した。

 よろこんだ赤いジャンバーの女の子は、さっそく竹ボウキで、落ち葉を掃き集める。


 しかし、竹ボウキの方が、女の子の身長よりもまだ長いのだ。

 よろよろと危なっかしく、まるで竹ボウキに女の子が引きずり回されているように見える。


 「いらない!」

 自由にならない竹ボウキに腹を立てたのか、赤いジャンバーの女の子は、すぐに竹ボウキを、ハーフコートの女の子に返した。


 竹ボウキを手にした黒いハーフコートの女の子は、ベンチに置いていた、つばの広い、大きなとんがり帽子をかぶると、サッと竹ボウキにまたがった。


 「もう、貸してあげない!」

 そう言った女の子は、竹ボウキにまたがったまま、フワリと宙に浮かんだ。


 「えッ?」

 私は驚いた表情になる。


 とんがり帽子の広いつばと、黒いハーフコートの裾が風になびく。

 竹ボウキにまたがった女の子は、そのまま一気に空高く飛びあがった。

 そして、そのまま、風を巻いて飛び去っていってしまった。


 ま、魔女……。

 ア然とする私の後ろで、今度は男の子たちの言い争う声が聞こえた。


 「ボクのだよ」

 「貸してくれよ」


 見ると、二人の男の子が、古い絨毯を取り合っている。

 一人は野球帽をかぶり、もう一人は……。


 頭にターバンを巻いていた。

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