第17話とある神様と、ありんこ

 とある山奥のとある古い神社にとある神様が独りで住んでいた


今日は5月も半ば、初夏の始まりである


神様、神社のベンチに腰掛け、なにやら、ありんこと話をしていた

「あ~、神様、なんとかしてください」

ありんこはそう言うと困った顔をして神様を見上げた


ありんこの困りごととは、こうである

実はアリは働き者と言われているが、中には日がな、なにもせず、

ぐーたらしているアリもいるとのこと


このぐーたらアリ、せっかく運んできた餌を横取りしては、食べ、

そしてなにもしない


働き者のこのありんこは、それを神様に訴えるべく、神様の前にすすみでた

「神様、私がこんなに働いているのに、何もしないアリがいるって、不公平

ですよね。なんとかしてください」

ありんこはこう神様に訴えたのであった


神様、う~んとうなっていたが、ふと笑顔になって言った

「ありんこよ、そなたは働き者である。だから、偉い

とはいえ、他のアリの怠惰を指摘するのは、ちと傲慢だな

働き者は、どんどん働き、働かない者はなにもしない

それは、本人が好き好んでやっていること。他人を非難するのはよくないな」


ありんこはそう言われるとぷ~っと頬を膨らませて、ぷんぷんした

「でも、神様~、なにもしないアリが餌を横取りするのはよくないですよね?」

神様、それを聞くと、うんうんとうなづきつつもこう言った

「それはそうじゃが、お前が働くおかげで餌はいつも余っているじゃろ、

餌が豊富にあるうちはそれでいいのではないか?誰も困らないし


「ありんこよ、己の道が正しいと思えば、迷わずすすめ、

しかし、他の者がどうしようと、あまり気に留めるな

お前はお前、他人は、他人、ありんこよ、我が道をすすめ」


ありんこはそれを聞くとはっとして、我に返った

「そうですね、餌に困っているわけではないので、怠け者は放っておきましょう

神様、私は自分の本分を全うして、毎日を頑張って歩みます」


そう言うと、ありんこは、自分の巣に帰っていった


実を言うと、神様、このありんこがかわいそうだったが、

アリの世界の事はアリに任せるという態度だったので、

神は余計なことを言うまいと思い、ありんこに対してこういった


世の中、不条理で、不平等だが、それでも自分の生活を淡々とこなす者が、

幸せになれるのだなと、神様は思っているのであった


神様、今日はちょっと真剣にありんこと対話しつつも、

お茶を一杯飲んで、まったりするのであった

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