第69話

 11月1日、水曜日、午前3時。


美保さん達に任せる探索地として、静岡の攻略に入る。


静岡県のダンジョン入り口数は、合計99個。


金色の宝箱がある重点地域は、来宮神社(熱海)、久能山東照宮、三嶋大社、厳島神社、伊豆山神社、富士山本宮浅間大社、修善寺、龍潭寺、医王寺、真珠院、栖足寺、御穂神社、事任八幡宮、小國神社、秋葉総本殿可睡斎、お湯かけ弁財天、清見寺辺りの計17箇所。


ユニークは、栖足寺辺りの1体のみ。


河童のような魔物から、12センチの魔宝石と『給水』を得る。


金色の宝箱からは、『金運』が3つと『開運』と『良縁』が2つずつ出て、あとは各能力値を上げる品だった。


銀色12、茶色31の宝箱は、市販の地図に印を付けて、美保さん達に任せる。


もう直ぐアメリカで『地図作成』を取れるはずだから、大丈夫だろう。


倒した魔物は約500体。


2時間半くらいしか掛からず、またアメリカに戻る。


7時半に自宅に帰り、美冬が支度する様子を眺めながら珈琲を飲む。


彼女を送り出したら、美保さん達が来る13時まで再度アメリカへ。


ロシアや中国の時よりも、かなりハイペースで宝箱の回収が進む。


今回でやっと『地図作成』のアイテムを取り終え、何とか美保さん達の静岡探索に間に合った。


この分なら、あと10日くらいで終わりそうだ。



 「今日からお二人には静岡をお任せしますから、宝箱を回収しながら頑張ってくださいね?

これが、宝箱の場所を示す地図になります」


「責任重大ね。

でも、宝箱を開けるのは楽しそう」


理沙さんがそう言って微笑む。


「和馬君的には、やっと私達も一人前になれたという事かな?」


珈琲を飲んでいた美保さんが、嬉しそうに笑う。


「探索の前に、お二人にはアイテムを食べていただきますね」


理沙さんには『地図作成』と『良縁』『開運』、更に各能力値を上げる品を1つずつ、美保さんには、各能力値を上げる品を2つずつ食べて貰う。


「これでもう、魔物を間引いていない場所でも何とかなるはずです。

お二人のペースで頑張ってみてください」


「有り難う。

いつも悪いわね」


「和馬君には、もう頭が上がらないよ。

お返しは何が良い?

お姉さん、君にならどんな事でもしてあげるよ?」


美保さんが、妖艶な瞳を向けてくる。


「何も要らないですよ」


「なら、今日もお風呂で理沙と一緒に・・ね?

彼女も最近、かなり上手になったでしょう?」


「あれだけしてれば当たり前でしょ。

もう和馬となら普通に愛し合えるもの」


「・・ええと、取り敢えずお二人の今のステータスを確認させて貰いますね」


2人が食べ終えたのを見計らい、会話の流れを他へと誘導する。


______________________________________


氏名:片瀬 理沙


生命力:5920


筋力:846


肉体強度:868


精神力:1147


素早さ:813


特殊能力:『自己回復(S)』『状態異常無効・改』『幸運・改』『結界』『隠密』  

     『地図作成』


魔法:『光魔法』『水魔法』


______________________________________


______________________________________


氏名:藤原 美保


生命力:8240


筋力:1740


肉体強度:1760


精神力:1890


素早さ:1718


特殊能力:『身体能力・改』『状態異常無効・改』『幸運・改』『隠密』

     『アイテムボックス』


魔法:『光魔法』『火魔法』『土魔法』


______________________________________


美保さんの『身体能力・改』の中には、『自己回復(S)』と『遊泳』が入り、理沙さんの『良縁』と『開運』は2倍になっている。


「理沙さんも、お忙しい中、頑張っている成果が出てきましたね。

美保さんはもう、この世界では上級の部類でしょう」


「和馬君に色々と染められているからね。

理沙を護る上で、随分と安心感が増したわ」


「また美保と差が開いてきたのね。

私もできる限り時間を作って、もっと頑張ろう」


「理沙さんは仕方ないですよ。

経済的な弱者からは実費しか取らない噂が広まって、毎月の依頼数が随分増えたとお聴きしてますよ?」


「和馬のお陰で、もうお金を稼ぐ必要がないからね。

麗子さんから聴いたわよ?

来年度から、私達もあなたの有限会社の社員になるのでしょう?

肩書だけなのに、年俸が50億とか本気なの?

美保と2人で100億よ?」


「お仲間の皆さんにもそれくらいお支払いしないと、税金が凄いんですよ」


「和馬君、世界一の大富豪だもんね。

君が使ってるネット証券、既に業界トップだよ?」


「その内、個人の銀行と証券会社を作ろうと考えてます。

僕と美冬、あとはお仲間の皆さんだけの、実質的な専用会社にするつもりです」


「どうやって?」


「銀行なら、口座の維持費用を高くすれば大丈夫でしょう。

年平均で500億円相当以上の預金がなければ、手数料を毎年3億円取るようにすれば、きっとほとんど誰も利用しませんよ」


「「・・・」」


「民間の銀行に任せておくと、経営破綻の恐れがありますからね。

利息なんて要らないし、安全な現金の置き場所として活用するつもりです」


「・・まるで貯金箱ね」


「まあ、そのようなものですね。

アイテムボックス内に入れておいても良いのですが、他へ送金したりする場合に面倒なので・・」


「雑誌などの取材依頼はどうやって断っているの?

勧誘の電話も凄いんじゃない?」


「家の電話はフリーダイヤルや非通知だと繋がりませんし、常に留守電です。

しかも、パソコンを使う時以外は電源を抜いているので。

スマホの番号はお仲間さんしかご存じありませんし、仕事用の連絡は、落合さんに丸投げですね」


「美冬は?」


「彼女の場合はスマホを2台持っていて、お仲間さん専用と、友人その他で使い分けています」


「理沙も最近はメディアに出る機会が増えたし、そろそろ他に人を雇えば?

若い女性の弁護士なら問題ないでしょ?

問い合わせが何件か来てるんだし」


「・・そうね。

考えてみるわ」


「では、そろそろ行きましょうか」


「ええ」


「うん」


話しながら着替えていた2人の準備が整ったのを見計らい、静岡まで送った。



 いつもより少し遅めの19時頃に、美保さん達を迎えに行き、共に入浴する。


ほとんど攻略していない場所は初めてだった2人。


約5時間半で600体以上の魔物を倒したらしく、更に能力値が上がったと喜んでいた。


美冬に夕食の時間を遅らせて貰い、21時まで、2人から濃厚なサービスを受ける。


理沙さんの協力があれば、キスだけで美保さんを満足させられるようになった。


尤も、その後理沙さんは、美保さんから倍返しされるのだが。


4人で夕食を済ませ、彼女達が帰宅した後、美冬が床に就くのを待ってから、アメリカのダンジョンへ。


『飛行』を用いて移動中、陸軍の女性兵らしきパーティーが苦戦しているのを見かけ、念のため尋ねてみる。


「助力が必要ですか?」


「お願い!」


「助けて!」


2人組の女性から、瞬時に乞われる。


2万円クラスのオーガを蹴り倒すと、目を丸くされた。


「・・有り難う。

あなた、凄く強いのね」


金髪ショートのナイスバディのお姉さんが、握手を求めてくる。


「でもどうして覆面をしてるの?」


茶髪でセミロングの女性が、少し訝し気に俺を見る。


「素顔を知られると不味いので。

決して犯罪者などではありません」


「顔を見せてくれないかな~。

良い男だったら、特別に、この後2人でサービスするよ?」


「私達、男には興味ないけど、あなたくらい強い人なら抱かれても良いわ」


「済みません。

大変魅力的なお申し出ではありますが、僕には既に心に決めた相手がいるので・・」


「あら残念。

こんな美女を袖にするなんて、女に不自由していないのね」


「・・これ、私達のメールアドレス。

気が向いたら連絡頂戴」


茶髪の美人さんが、鉛筆で書いたメモ用紙を渡してくる。


「有り難うございます。

・・お二人の武器、ダンジョン製の短剣と、セラミックの長剣ですね」


2人が腰に差す短剣と、手に持つ長剣、木製の盾を眺める。


「ええ、そうよ。

ダンジョン製の武器は高価だし、滅多に手に入らないから。

こんな短剣でも1万ドル以上よ?

だから軍でも、ほとんど持てる人はいないわ」


地図を見る。


ここから飛行で1分の場所に、茶色の宝箱が在る。


そして改めてこの2人を眺める。


どちらも青く映り、生命力が800くらいで、他の能力値は200台だ。


「・・少しお時間を頂けますか?

全部で10分くらいです」


「良いけど、その気になった?」


「お二人を特別な場所にご招待致します。

危ないので、腰に腕を回させてください」


2人を抱えて一気に空に舞い上がる。


「「!!!」」


マッハ1で移動し、森林内の洞窟まで行くと、そこに居る魔物を倒しながら宝箱の側まで辿り着く。


途中で、Eランクの槍が1つドロップする。


「開けてみてください。

罠はありません」


呆然としながら、それでも何とか後を付いて来た2人にそう告げる。


「良いの?」


「ええ、中身はお二人に差し上げます」


茶髪の女性が蓋を開けると、1本の長剣が出て来た。


「Dランクの長剣です。

茶色の宝箱から出る物の中では、当たりですね」


「・・本当にこれを貰っても良いの?

売れば10万ドル以上よ?」


「勿論です。

もう1人の方にはこのEランクの槍を差し上げます」


「ええ、ほんとに!?」


「これらを使って、頑張って生き延びてくださいね。

では、戻りましょうか」


帰りは武器を抱えた彼女達のために、かなり減速して、元居た場所まで送ってやる。


「それではこれで失礼します」


「待って!」


飛び立とうとしたら、茶髪の美人さんに腕を取られる。


覆面越しに荒々しいキスをされ、『私も』と続いた金髪さんにも同じ事をされる。


「・・連絡くれるの、ずっと待ってるから」


切なそうな瞳でそう言われたが、はっきりした事は何も言えなかった。



 「・・もしかして、本気で惚れちゃった?」


「・・・」


「焼けちゃうな。

今夜はもう帰って、相手してくれない?

マリアだって、アソコが熱いでしょ?」


「良いけど、多分朝までよ?

寝不足で部下をしごけるの?」


「アッハハ、大丈夫。

そんなに柔じゃないって。

・・でもさ、彼、空を飛んでたね。

クリプトン星って、本当にあるのかな?」


「さあね。

でも、この事は他言無用にしましょ。

他人に知られたら、きっと大騒ぎになるわ」


「だね」

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