第47話

 7月25日、火曜日、午前11時。


この日は理沙さんも時間に余裕があるという事で、事務所を臨時休業にして貰い、美保さんと2人で俺の家に来て貰った。


「それで、大事な話って何なの?」


アイス珈琲のグラスを傾ける理沙さんが、そう切り出す。


「・・実はですね、先日、ダンジョンで『念話』という特殊能力を得たのです。

その能力は、距離が離れた相手でも、頭で考えるだけで会話ができるというものなのですが・・」


「へえ、それは凄いじゃない。

ダンジョン内で遠距離通信ができるなんて、世界中で騒ぎになるんじゃない?」


「いや、勿論お仲間以外には教えませんよ。

それで、僕とその人が念話を行うにはある条件がありまして・・」


「あ、お姉さん分っちゃった。

エッチな事なんでしょう?」


美保さんがそう言って微笑む。


「・・・」


「え、そうなの?

どんな事?」


理沙さんが驚いたように尋ねてくる。


「能力者である僕の、血液か精液を摂取する事です」


視線を下に下げつつ、そう言い切る。


「和馬君は、もう他の人とそれを済ませたの?」


美保さんがじっと俺を見てくる。


「はい。

美冬や南さん、百合さんの3人とは、既に済ませました」


「じゃあ、もう童貞ではなくなっちゃったのね?」


「え?

いえ、まだ童貞です」


「あれ、じゃあどうやって・・・あ、成程」


「どういう事?」


納得した美保さんに、理沙さんが尋ねる。


彼女に耳打ちされた理沙さんの顔が赤らんだ。


「和馬のエッチ」


「あの、僕は決して厭らしい意味でお願いしている訳ではありません。

お二人にもし何かあった時でも、スマホを使わずに僕に連絡できれば、ほぼ助かります。

たとえ人質にされても、通信機器を所持していない状態で他者に連絡できるなんて普通は考えませんし、身動きできない状態でも頭で考えるだけで良いのですから」


「それはそうね。

確かにその通りだわ」


「血液でも良いのですが、よく考えたら、今の僕から血を取るのはかなり困難なのです。

『自己回復(S)』が働くので、刃物で傷を付けても直ぐに塞がってしまうでしょうし、そもそも、僕の今の身体が、生半可な武器で傷付くとは思えないので・・。

Aランクの短剣で勢いよく刺しても、その剣の方が刃こぼれしましたから」


「「・・・」」


「ただ、勿論これは強制ではないので、お嫌でしたら仰ってください。

その場合は、今後のダンジョン探索も、僕がご一緒しますから」


「え!?

和馬君、もう一緒に入ってくれないの?」


美保さんが慌てている。


「僕は今後、主に海外のダンジョンを探索しなくてはならなくなったのです。

後でご説明しますが、どうしても集めなければならない物ができたので・・」


「・・私は、これからも和馬君と入りたいな。

探索が済んだ後、君と一緒に入るお風呂が楽しみなの。

君の精液は喜んで受け入れるけど、お風呂は今後も一緒に・・」


美保さんが、俯きながらそう告げてくる。


「そういう事情なら、私も和馬の物を受け入れるわ。

・・ただ、探索はともかく、それが済んだ後は一緒にお風呂に入ってくれない?

美保がここまで楽しみにしている事なら、私もそうさせてあげたいの」


「それは構いませんが、本当に宜しいのですか?」


「ええ。

これまで和馬と一緒にお風呂に入ってきて、男性の物にも大分慣れてきたしね。

和馬のだけなら問題ないわ。

あなたなら大丈夫。

それにそうしないと、離れた場所にいるあなたを呼べないし」


「有り難うございます」


頭を下げてお礼を言う。


「じゃあ早速今日、ダンジョンに入ってからお風呂でそうしましょ」


「あ、その前にお二人にお渡しする物がございまして・・。

ロシア探索で沢山のアイテムを得られましたので、その内の幾つかをお二人に差し上げます。

熱いお茶を淹れますので、ここで召し上がっていってください」


「それって例の、1つ3000万するアレ?」


「いいえ、今から召し上がっていただく物は、最低でも1つ数百億円はするでしょう」


「「!!!」」


「お二人に9個ずつ差し上げるので、数千億円にはなりますね」


「・・無理よ。

そんな値段がする物を食べるなんて・・」


理沙さんが弱々しく首を振る。


「慣れてください。

最後には、オークションに出せば、1つで1兆円くらいはする物を召し上がっていただくので」


「「!!!」」


「金額の事は考えず、見た目で判断して口になさると良いでしょう」


「・・初めてこの家に来た時、和馬を見て、自分とは住む世界が違う子供だと思ったけれど、そんな考え自体が甘かったわ。

はっきり言うわ。

和馬、あなたは異常よ、異常。

その金銭感覚も、存在自体も、・・私達のような、同性しか愛せない者達に、愛を抱かせる事も・・ね」


「理沙もやっとその気になったのね。

私達にとっての和馬君は、男性ではなく、パートナー。

子供を授けてくれる時だけは旦那様。

それで良いじゃない」


「あの、僕を旦那様と呼ぶのはちょっと・・」


「嫌なの?」


「何だか偉そうな感じがするので。

僕は、美冬以外の皆さんを、お仲間だと思っているから・・」


「フフッ、そういう所も大好き。

女性を物扱いしていない事が、ちゃんと伝わる」


「そう言えば美冬は?

今は夏休みでしょう?」


「まだ寝ています。

学生で、家事もこなしてくれる彼女は、休日くらいしかダンジョンに入れないので、今は深夜まで北海道のダンジョンを1人で探索しているんですよ。

だから、昼間は好きなだけ寝かせています」


「1人で探索してるの!?」


「おやつ代わりに沢山のアレを食べさせてきたので、彼女、もう世界で2番目に強いんです」


「「・・・」」


「さ、こちらの品々をどうぞ。

直ぐにお茶をお持ちしますので」


『自己回復(S)』『状態異常無効』『毒耐性(S)』『魔法耐性(S)』『炎耐性(S)』『氷耐性(S)』『金運』『良縁』『開運』を其々2人の前に置く。


2人とも、まだそれ程能力値が高くないので、取り敢えず基本セットを渡すことにした。


理沙さんは暫く躊躇ためらっていたが、美保さんが食べ始めたのを見て、自分も恐る恐る口にし出す。


彼女達の装備も、全てAランクの物に取り換えよう。


そう思いながら、お茶を淹れに行った。



 2人を連れて、奈良のダンジョンで6時間ほど探索した後、家に戻り、浴室で摂取行為に及ぶ。


最初は積極的な美保さんが行い、理沙さんはその様子を浴槽から眺めていた。


摂取を終え、美保さんが浮かべる恍惚こうこつとした表情に当てられた理沙さんが続けざまに行為に及んで、その後はいつも通り、ゆったりと湯に浸かった。


ただ、美冬と共に夕食を取った帰り際、美保さんがこっそりと耳打ちしてきた。


『これからは、お風呂で毎回してあげるね』


平常心を保つ努力をした俺に、彼女はにっこりと微笑んだ。


『自己回復(S)』が効いて、今日の2人はとても頑張ってくれたので、能力値も大分上がってきた。


Aランクの武器を使っただけあって、2人が魔物を倒す速度も随分と短縮されたしね。


そんな彼女達の現在のステータスは以下の通り。


美保さんの場合、俺が誕生日プレゼントとして渡した能力値セットのお陰で、どの値も300ずつ強化されている。


今日も2人に其々1つずつ食べて貰おうとしたのだが、これ以上食べると、美冬の作った美味しい夕食が取れなくなるからと断られた。


でもまあ、これなら今後も2人で何とかなるだろう。


俺や南さん達が強い魔物を狩り尽くした場所でなら、という条件は付くけれど。


『状態異常無効・改』や『幸運・改』の中に含まれている物は、他の皆さんと同じである。


百合さんだけ、『幸運・改』の中身が少し違うかな。


______________________________________


氏名:片瀬 理沙


生命力:4060


筋力:229


肉体強度:245


精神力:512


素早さ:207


特殊能力:『自己回復(S)』『状態異常無効・改』『幸運・改』


______________________________________


______________________________________


氏名:藤原 美保


生命力:6105


筋力:795


肉体強度:824


精神力:901


素早さ:779


特殊能力:『自己回復(S)』『状態異常無効・改』『幸運・改』


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