第5話
「日奈、、そろそろ帰るよ」
母の呼ぶ声に我に返った。
おばあさんの話は、重くってそして信じられなかったけれど。
この人が私を亡くなった娘の生まれ変わりだと信じているのは本当らしかった。
なんて答えればいいのだろう。こういう場合。
私は迷ったけれどとりあえず笑顔を作った。
「今日はもう帰るね。 また、会いに来るよ、お母さん」
とりあえず、そうこたえておいた。
おばあさんはうなずている。
「待ってるよ。勉強頑張ってね」
私も頷いてその場を離れた。
「なんの話をしていたの?」
「おばあさんの昔話を聞いていただけだよ」
どうせ、こんな話したって両親は信じないだろう。そう思って適当に答えておいた。
おじいちゃんにも、また来るねと言って、その日は帰った。
大学に進学し、色々と忙しい日々が続いたが、どこかあのおばあさんが気になっていた。もう一度会って、話を聞いてみたいと思っていた。
私がおばあさんと再会したのは、それからしばらくして夏休みに入ってからだった。
なんとなくおばあさんが気になって、おじいちゃんに東京のお土産を届けるといって一人でその施設を訪問した。
おじいちゃんにお土産をわたし、おばあさんを探した。
この前と同じ場所で、おばあさんはすぐに見つかったけれど、決定的に違っていたことが一つあった。
人に囲まれていたのだ。おばあさんによく似た初老の女性、若い女性に小さな女の子。
タカちゃんだ。そして、タカちゃんの家族だと私はすぐに分かった。
そのタカちゃんと目が合った、タカちゃんはおばあさんによく似た優しい笑顔で私に近づいてくる。
「あなた、ひょっとして、前世のお姉ちゃん?」
「え?」
「ごめんなさいね。母がそんなこといっていたものだから。驚かせちゃっよね?」
私と貴子さんはおばあさんから少し離れた場所に座った。
「この前、勇気を出して母に会いに来たの」
「おばあさんに、家族はいらっしゃらないと思ってました」
「本当はモット早く会いに来たかった。 でも、一度タイミングを逃すとなか中勇気がでないものなのよ」
「そうなんですか?」
「父のの時も、勇気が出なくてこれなかった。それだけ、姉の事は私たち家族にとって影みたいなものだったから」
「影?」
貴子さんは頷く。
「姉が死んで以来、いろんな人が励ますふりをして根掘り葉掘り聞いてきた。あの時代、娯楽がなかったから田舎じゃ、人のうわさ話が最大の娯楽だったのよ。私も嫌だった。あなたがお姉ちゃんの代わりに、お父さんやお母さんを支えなさい、しっかりしなさいって近所の人や親せきにいわれるのがね」
そんなものなのだろうか?私にはよくわからなかった。
「ごめんなさいね、こんな話しちゃって。 それが嫌で高校を卒業して家をとびだして、一度も家に帰らなかった。近所の人だけじゃなく、両親も私に寄り掛かった来ようとしていてそれも嫌だったから」
高校卒業してから一度もあってないなんて、きっとほかにも何かそうなる原因があったのかなと私は思った。
「その、そんなにあってなかったのに、急に会おうと思ったのは何故なんですか?」
私は素直に疑問に思ったことを聞いた。
ちらりとおばあさんを見る。
おばあさんはひ孫にあたる女の子と遊んでいた。
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