小説家への道は厳しい

夕日ゆうや

小説家を目指す者と幼馴染み。

「俺の書いたSFファンタジー、どうよ?」

「これ、本当にSFファンタジー?」

 朱里あかりが疑問を口にする。

「なに言ってんだよ。これは科学的な考察をしつつ、魔法を使える世界観だ」

 科学の発展により、宇宙エレベーターやスペースコロニーと言った未来的な要素に加えて、遺伝子操作による後発能力・魔法というファンタジー要素を組み込んだ、最新の世界観である。

「あんたはやっぱり、ラブコメを書くのが一番だと思うよ」

 朱里は苦笑いを浮かべて、俺の作品を否定してくる。

「なんだと?」

大治だいちは視野が狭いからね。少し考えを改めないと」

「なにを! これでもSFファンタジーも書けるんだからな!」

「ははは。ならWEB小説として投稿してみたら? いけるんでしょ?」

「ああ。やってやるさ! 俺はラブコメだけじゃない。SFファンタジーも行けるんだ!」

 そう言って、WEB小説投稿サイトに登録をし、書き始める日々が始まった。

 しかし、そもそも読まれない。

 人の登録者数は100万を超えているはずなのに、全然読まれる気配がない。

 俺は登録して投稿したらすぐにPVがつき、一週間で10万PV、そのあとも評価が6千を超えてすぐに書籍化の打診、賞金100万とともに一気に人気にんき有名作家となり、アニメ化もする。

 そんな俺の野望はすぐに打ち砕けることになる。

 なぜならそもそも読まれないからだ。

 一応、ラブコメも、SFファンタジーも出してはいるが、読んでくれる人は同じくらい。ファンタジーの方が若干人気にんきがあるらしいが、俺の実力はこんなもんなのか……。

「ほら。大治、落ち込まないの」

 背中をぱんっと叩く朱里。

 俺を励ましてくれるのか。

「あんなに意気込んでいたのに……!」

 言葉の語尾に笑いを含む言い方に、俺は怒りを露わにする。

「うっさい」

「ふふ。まあ、頑張ったね」

 朱里は嬉しそうに微笑み、マフラーを渡してくる。

「これで暖かいでしょ? クリスマスプレゼント」

 もうそんな時期か。

「ありがと。俺からは、このお菓子セットをやろう!」

「あははは。相変わらずのチョイスね」

 俺は困ったように頭を掻く。

 いつも朱里には叶わないな。

「でも、頑張っている大治が好きだよ」

「……そうかい」

 きっと、その好きは友達のだろ。知っているんだ。

「格好いいもん」

 小さな声で呟いた言葉は聞こえなかった。

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小説家への道は厳しい 夕日ゆうや @PT03wing

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