第36話 死ぬのは嫌だ

「ここに来てから今まで俺はお前を見てきたんだよお、どうせなら幸福の寸前で殺そうと思ったんだあ、それで今というわけさあ」


「ごめんな、さい…」


「謝っても許さないなあ、俺が許したとしても正人は許さねえよお」


ポタポタと血が垂れる。


「もういいでしょ。というかその銃はどこから持ってきたの?」


ジョティーヌが近づいた。


バンッ


地面に弾を打ち込んだ。


「近づくなよお、実はさっきの銃とは別にもう1つ持ってたんだぜえ、殺す用の銃さあ」


「怖いわね。」


ジョティーヌは優志の手を握った。

優志は「ごめん」と言った後、その手を振り払った。


「僕を、置いて、行って、ください。」


ジョティーヌ達が「ダメだ」と止めた。

メガネも僕の言ったことに反対した。

当然僕は驚いた。

そんなこと言われるなんて思っていなかったから。

意外と良い奴だと思った。

最初は嫌いだったけど、何だかんだで上手くやれてるのかもと思えてきた。

死ぬのか、嫌だな。


「あーなら僕んも置いていってよ。」


鳶がそう言った。

僕はさすが相棒だと、心の中で飛ぶように喜んだ。


「鳶くんは、助かります。僕は、もう、助から、ない。」


「あーでも。」


鳶くんは下を向いたまま口を閉ざした。

どうやら分かってくれたようだ。

あの場所を知っているのは鳶くんと僕しか居ない。

だからどっちかがいなきゃダメなんだ。


「ほらあ、さっさとこの場から出ていけよお、コイツの死を見るのは俺だけでいいんだよお」


バンッ

バンッ


1つ結びの男はまた地面に向かって銃を撃った。


「わかった、行くぞ、」


メガネはあっさりそう言った。

鳶はその言葉を聞いて「下ろして。」とか、暴れるとかはしなかった。

他のみんなもそうするしかないと思ったのか、頷いた。

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