第26話 毒

どれくらい時間が経っただろうか。

僕は寝ることなくキャップをかぶった子の横で本を読んでいた。

時計を見ると深夜3時。

今の所特に変わった様子はない。


ミシ、ミシ、ミシ


床の軋む音が聞こえてきた。

誰かがこっちへ向かってくる。


「そいつ大丈夫そうかあ?」


1つ結びの男だった。


「大丈夫みたいですよ。1回起きましたし。」


「そうかあタバコ吸ってくるわあ」


カチカチとライターをつけながら外へと歩いて行った。



時刻は朝の6時。

女性がリビングに入ってきた。


「おはようございます。」


僕が挨拶をすると挨拶を返し、キッチンの方へと入って行った。

朝ごはんを作るようだ。


「これでもう大丈夫だな。」


僕は独り言を呟いた。



「いただきます。」


今日の朝ごはんは僕の好きな卵かけご飯だ。

味噌汁も、サラダもあった。


「あー卵かけご飯は最高だね。」


鳶くんがそう言って美味しそうに食べた。

やっぱり僕と気が合うな。


「最高ですね。やっぱり卵かけご飯は最高です。」


ガシャン


突然お皿が割れる音が聞こえてきた。

振り返るとキャップをかぶった子がもがいていた。

思わずその場にいた全員が駆け寄った。


「大丈夫ですか!?」


僕の声を聞き首を振る。


「くる、し、い、」


上手く声が出せないみたいだ。

恐らく毒が仕込まれたのだろう。


「た、す、け、て、」


「解毒剤は持ってないですか?」


少女は首を横に振った。


バタ、バタ、バタ


体がすごく揺れている。


バタ、バタ、バタ、バタ…


僕の手から体が離れた。


「これはやばい。息してないみたいです。」


彼はそのまま帰らぬ人となった。

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