第22話 アリバイなし

「…」


「犯人は誰だと聞いて素直に答える人がいれば良かったんだがな、」


メガネはそう言うとフッと笑った。


僕は第1発見者の女雄が怪しいと思う。

まだこの人達から話を聞いていないから確信は持てないけど。


「アイツを最後に見たのはいつだ?」


「最後に見たのは畑を見に行った時だよね?」


女雄は首を傾げながらそう言った。


「確かにそうだったかも」


他のメンバーがそう言いながら頷いた。


「何で畑に行ったんだ?」


「俺が行ったんだ。このままぼーっと生活してても意味がないと思うからどうせなら何かしようぜって。それで少女に種を貰って植えることにしたんだ。ほら。」


キャップをかぶった子がそう言いながら種を出した。


「それはミニトマトの種だよ。畑に着いた時にはあの子がいたんだけど、植えようと畑の中に入ったらあの子がいなくなってたんだ。」


女雄がそう言いながら申し訳なさそうな顔をした。


「自分を責めない方がいいですよ。」


僕がそう言うと女雄は「ありがとう。」とお辞儀をした。


「でもね…」


女雄が何かを言いかけた。


「ん??」


「何でもないから。」


「そうですか。何かあったら言ってくださいね。」


僕はそう言った。

「何かあったら」にはちょっとした思いを込めた。

例えば殺してしまった時、殺しの現場を見てしまった時、狙われている時とか。

そんなことが起こるのでは無いかと想像していた。


「首吊りに使われていた、このロープに心当たりは無いか?」


メンバー全員「ないです」と言わんばかりに首を振った。


「そうか、後で少女にも確認を取る、」



少女にも確認を取ったが、ロープは渡していないそう。

あの子が居なくなったのは畑に着いてから畑に入るまで。

一瞬にしていなくなったと言っていいだろう。

このグループのメンバー全員にアリバイはない。

誰が犯人なんだ。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る