第19話 金髪のトランシーバー

朝になり、また1日がスタートする。


「朝食持ってきましたよ。」


僕と鳶は今小屋にいた。

金髪にご飯を届ける為だ。

メガネとジョティーヌは小屋の前で待ってくれている。


バタバタしていてすっかり忘れていたあの事を思い出した。


「そういえばトランシーバーでやり取りした相手って誰だったんですか?」


「友達だ、名前は言えないがこのメンバーで俺が唯一信頼出来るやつだ」


「そうなんですね。ところで、トランシーバーは回収されなかったということですか?」


金髪は笑った。


「それはこの小屋に入ってたんだよ、見つけた時は驚いたぜ、連絡取り合うものが置いてあって何のためにスマホ回収したんだってさ」


確かに。

スマホを回収したのは連絡手段を無くすためじゃないのか?


「それで俺と友達って丁度2人分あったからお互いにそれで連絡取り合ってたんだ」


「なるほど。やっぱりこの村って何処かおかしいですね。」


「そうだな」


金髪はまた笑った。

以前では笑った顔なんて見たことがなかった。

これも復讐が成功したからなのだろうか。


「早くしろ戻るぞ、」


メガネがそう言った。


「あー呼ばれちゃったね。」


鳶が一言発した。


「それじゃあ僕達は戻ります。」


「ちょっと待て」


金髪が僕の腕を掴んた。


「俺のトランシーバーが無くなったんだ、ポケットに入れておいたのに、それだけ伝えておく」


「そうなんですね。教えてくれてありがとうございます。」


「おう、じゃあまたな」


金髪はまた笑顔に戻った。


ジョティーヌがドアから顔を出してぺこりと挨拶をした。


僕達は少女から貰った鍵をかけて小屋を後にした。



家の前に猫がいた。

しかもこの前拾った猫と一緒だ。

猫の怪我は大丈夫そうだな。


にゃー


「あーこの子の名前は、にゃー太郎だよ。僕んがつけた。」


嬉しそうに話す鳶の顔を見て少し安心した。

あの事件があって疲れているみたいだったから。

実際僕も疲れているんだけど。


「癒されるわ。にゃー太郎よろしくね。」


ジョティーヌがにゃー太郎に向かって笑顔でそう言った。


にゃー太郎もなんだか嬉しそうだった。




「誰かーーーーー!」


大きな叫び声が聞こえた。

どうやら何かあったようだ。

僕達は声のする方へと走って行った。

走っている最中、僕には輝明の死体がフラッシュバックしていた。

何事もなければいいのに…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る