第13話 捕まえた
森の中はひんやり冷たい。
人影が見えた方向へと向かって進んで行く道は険しかった。
草が生い茂ってるから通りにくいし、何よりぬかるんでいる場所もある。
誰かを見つけたとしても、追いかけるのは一苦労だ。
その誰かもきっと同じ状況になるだろうけど。
「まだ居ないのか、」
メガネが息を切らしてそう言った。
「まだみたいです。」
僕はそう返しまた前を向いた。
カサカサカサカサ
「なんの音!?」
「あー動物とかかな?とりあえず向かおう。」
僕達は音のする方へと向かった。
にゃー
草の中から出てきたのは猫だった。
「あー猫だ可愛い。あれ?この猫怪我してない?」
よく見てみると確かに怪我をしていた。
足が痛そうだ。
「早くさっきの道に戻るぞ、」
メガネはそう言うと元のルートへ戻ろうと足を進めた。
「待ってください。」
僕の言う言葉になんの反応もしない。
足も止めてくれない。
「あー僕んこの猫ちゃん連れていくよ。」
そう言うと猫を抱えて歩き出した。
その猫は意外と大人しく、鳶に懐いているようにも見える。
今度はメガネを先頭に森の中へと進んでいく。
「いたぞ、」
メガネの声で辺りに目を向けると、少し先に確かに人が見えた。
フードを被った人だ。
「俺よりお前が先頭の方がいいだろ、」
僕を前に押し出し、先に行かせようとした。
別にいいけどさ、お願いしますの言葉くらいかけてもいいんじゃないかと思った。
ゆっくりゆっくりと足を進める。
まだ相手は気がついていないようだ。
ゆっくりゆっくりと足を進める。
何か話し声がする。
独り言だろうか。
相手との距離10歩ぐらいまで来た。
まだ顔は見えない。
もう少し近づいてみる。
「は?犯人探ししたところで証拠がなきゃ捕まえられないだろ、だから大丈夫だって」
やっぱり誰かと会話している。
でも周りに誰もいない。
スマホも回収されている。
トランシーバーでも持っているのだろうか?
それにしてもこの声聞いた覚えがある。
「そんな弱っちい人間になっちまったのか、お前は」
相手との距離5歩。
僕は勢いよく飛び出した。
「なんだお前は」
やっと僕達に気がついたのか荷物を置きっぱなしにして走っていった。
「お取り込み中だ、一旦切る」
トランシーバーをポケットに入れ走っていく。
でも、僕には追いつける自信があった。
だってその時にはもう残り3歩の距離まで追いついていたから。
ガシッ
「うわ、マジかよ」
相手は腕をブンブン振り回した。
それでも僕は腕を離さなかった。
離すどころか腕も強く握った。
「いてえ」
痛さの衝撃でフードが頭から剥がれた。
その人物は金髪の男だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます