第11話 昨日のこと

「あら?みんなどうしたの?」


木に死体がもたれかかっている為まだ気づいていないようだ。


「ジョティーヌこそ今までどこに言ってたんですか?心配してたんですよ。」


ジョティーヌはありがとうと僕に抱きついてきた。

こういうのは好きじゃないんだけど。


「ごめんなさい。昨日の夜一緒に探しに行った時に人影が見えたの。ほら、あの物音が聞こえるちょっと前に。」


そう言うと昨日見た出来事を話してくれた。

どうやらあの時、人影が小屋に入っていくのが見えて最初はその小屋に行くか迷ったけれど輝明かもと思い入ることを決意したらしい。

その小屋には誰もいなく、気のせいかと思い小屋から出た途端に森から物音がして、森の中へと進むと輝明くんの上着を見つけてその周辺を探すも見つからず、さすがにライトもなく暗いこともありその場を動かず朝まで待ち今に至る。


「で、あの子は見つかったの?」


僕は黙り込んだ。


「そこにいるぞ、」


メガネが輝明の死体に向かって指を指した。


ジョティーヌは振り返り、変わり果てた輝明の姿を見る。

泣きながら震えながらも輝明の名前を呼んでいるジョティーヌを見て僕は悲しみや辛さが込み上げてきた。

そこで僕は久々に普通の人間になれた気がした。


殺しをしてから僕は悲しさや辛さを感じることはなく、快感と楽しさだけを頼りにしていた。

もちろんここに来てからもそれは変わらないはずだった。

しかし、罪人と疑われない為にも善人に見えるような演技をこれまでして来たのだ。

そして、ここでは初めて分かり合えそうな相棒も出来て僕は新たな人生のスタートを切った。

今では悲しいという辛いという感情まで感じることが出来たことに驚きが隠せない。


「いつまで泣いてんだよ、さっさと犯人探しするぞ、」


メガネがジョティーヌに声をかけた。

その声は鋭く突き刺すように冷たい声だった。


「そうね。犯人探しを始めましょう。」


ジョティーヌは泣きやみ、心をどこかに落としたような顔でそう口にした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る