第10話 死体

「輝明…」


僕は死体に近づき手を合わせた。

そして切られた首元をよく見た。

ナイフで切られたみたいだった。


「おい何があった、」


メガネの声だ。

足音もちらほら聞こえる。

どうやらみんなこちらへ向かっているようだ。


「俺ちゃんヤバいの見つけちまって…」


「輝明が死んだ。他殺だ。」


「本当か、」


メガネがこっちに走ってきた。

今日はどうやらネクタイを付けていないようだ。


「本当だなこれはやばい、」


そう言うとメガネを自分のしっくりくる位置へともどした。


「そうですね。」


僕はその動作だけでちょっとイライラしてしまう。

嫌いな人間を見るとすぐイライラしてしまう。

表に出さないだけで。


「あー明くん何かあったの?」


鳶くんが来た。

ここまで走ってきたようで、少し汗をかいている。

死体に気がついたのか、鳶くんはため息をついた。


「輝明が殺されたんです。何者かに。」


「あー昨日は何も無かったのにね。」


「もしかしてジョティーヌも…」


「あー殺されてるかもしれない。もしくは殺した本人かもしれない。」


「僕は鳶くん以外信用してないです。鳶くん以外は全員疑いますよ。」


この前まで信用していなかった僕がいつの間にか鳶くんのことを信用していた。

きっと一緒にいた時間のせいだろう。


「あー僕んも明くん以外は全て疑ってかかるよ。」


「なにこれ死体かよだるいわ帰りてぇ」


学ラン姿の男が欠伸をしながらこっちへ来た。

ねむくんというあだ名をつけた。


「今どういう状況?」


「死体を見つけてそのまま放置って状況です。」


「なるほどね。犯人見つけたら教えて。」


そう言うと眠くんは元来た道へ帰って行った。


ガサガサガサ


森から音がした。

動物だろうか。


ガサガサガサ


どんどんその音は近づいてくる。

風も強くなってきたように感じる。


ガサガサガサ…ガサ


森から出てきたのはなんとジョティーヌだった。

無事生きていたのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る