第2話 村

少女について行くと周りがだんだん霧に包まれていった。

もう自分がどこにいるのか分からない。


「こっち」


僕が立ち止まると少女はそう言った。


「どこに向かってるの?」


「村だよ」


「村?」


「そう」


僕はどうやら村に向かっているらしい。

ここは東京だ。

村という村は無い。

なら一体どこへ?


「ほらあそこ」


少女の指さす方を見ると、霧に隠れているが確かに村がうっすら見えた。


「この橋渡ってあの村に行くの」


「そっか。」


僕は橋を渡った。

その橋にも霧がかかっていて異様な雰囲気を放っている。

この橋は頑丈そうで車も通れる程だから落ちる心配はしなかった。

心配なのはその村で何をされるのかだ。


橋を渡りきった僕は少女に案内され、一軒家に入っていった。

多少ホコリは被っているが住めそうな家だった。

中には生活用品があり、前まで誰か住んでいたように見えた。


「これってあなたのお家?」


「違う」


少女は首をブンブン振ってそう答えた。


「じゃあ誰のお家?」


「誰のものでもないお家だよ」


「それってどういう?」


「リビングは綺麗だから、そこに向かうね」


僕の話を無視して少女はリビングへと案内した。


リビングは少女の言った通り綺麗だった。

ホコリひとつ無い程に綺麗だった。

まあそれが逆に怖いんだけど。


「私の案内はここまで」


そう言うと少女は僕の目の前から消えた。

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