9話 本戒
あぁああ。ぁ あああ。
この世に生まれた赤子の一声は、よろこびなのか、なげきなのか。
赤子が産まれた。
「よぅ、やった。よぅ、やったにゃ」
取り上げ婆は、汗まみれの
そばには、
お産の最中は
「それ。かあいらしいのんが、ついとる。乳、ふくましてやりにゃ」
早速に取り上げ婆は、赤子を
「この子の首は、ほっそりとして、クグイ(白鳥)のようだにゃ」
「――
「でも、
「飛んで行くんだ。私とお前の子は」
そして、言いそえた。
「それから、あいつの子だからな」
そうして、産の忌明けに
(
「なーむ、みょうほうれんげきょう。なーむ」
香の煙がたゆたうのを、
「おり(わたし)、お経なんぞ、わからん」
「手を合わせて。
「赤子が元気に育ちますように、とか?」
「そうさ」
本当に願うことは。
言いかけて、
ゆっくりと、
「寝たか。わしの読経が子守歌代わりか」
「お。また、重とぅなった」
「――さて。こたびの
「僧6名、寺院建築工2名、
「そうでしたか」
「聞いておらなんだ様子だな」
「
「いえ」
あの、くそぽんこつ。
いなくなる前の夜、
子供のように泣いていたくせに、真似事とはいえ、することはしていった。
「それから、
このような身内の語らいの中でだけ、
かねてより、尼さまは戒律を学ぶために
「
赤子を見る
「ん? なんだ。
(あっぶねー。油断ならねぇ、この
※〈露盤博士〉 塔の建立を担当する鋳造技術者。博士は尊称。
〈瓦博士〉 瓦工の尊称
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