8話 産み月
「
「んだな」
「よっと」
工房に行く。
この頃では、工房の一角に
そこで、余った
それを、とある貴人が、なびかぬ女に贈ったところ、めちゃくちゃ、〈いいね〉という反応をもらえたとかで噂が噂を呼び、
もう、志乃布を「
ただ、老工人には「不細工さまさま」と拝まれている。
(復讐してやった。もはや、こいつら、おり(私)なしではいられん)
志乃布は、にじゃりとほくそ笑んだ。
それから、
米が足りないときは、アワ、ムギ、ヒエ、大根、イモ、キノコ、ノビルを混ぜる。その配分も、女たちにほめてもらえた。男も子供も、うまいと食べてくれた。
それで
そうして、
しばらくすると、えずくこともなくなった。
職人気質な人で、黙々と工房で働いている。
その他の時間は、仏の間で読経している。
「へその穴が広がった」
他愛ないことを、一方的に
「足まで手が、たわんようになった」
次の日から
眠るときは、二人、適度に間を空けて眠っている。
それが続けば
うそだ。
いつも
その背中を見つめ、
ずっと、その背中を見つめている。
ある夜。
「なんか、カン違いしてしまいそうなので――」
そういうことはしないでくれ、というのであろう。
「
「……この、くそぽんこつ」
「あの
それで、とてつもなく久しぶりに
目が覚める前だ。
「赤子が、もうすぐ産まれる」話しかけると、
「楽しみだなぁ」、もう一方の
「
「――」
答える気がないのかというぐらい、沈黙が開いた。
「ん-と」
やっと。
「
「……」
「
はっと、
夜が明ける時刻だった。
隣りを見ると、寝ているはずの
当てずっぽにでも、そちらに行ってみると、果たして、川縁で行水している
ぱんと張った腹の上で、ぷるりと乳房がゆれて、大きな瞳が
「早う、着て」
目のやり場に困って、
「いや。見んにゃええだろ?」と、
「……
「……」
志乃布は黙って衣を受け取る。
衣のえりを合わせ、しゅるんと帯を腹に巻く。
もう、帯は二回りできず、端っこは適当に腰と帯の間に突っ込んだ。
「どっちも
「おりは
最後まで言えなかった。
男の腕に、ぐいと引き寄せられた。
おりは
だから、
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