7話 志乃布と多須奈
尼さまの寺へ、
「
尼さまは、わかったという顔で、お茶の時間に
「
「はぁ」
このままだと、
「
「……いずれは」
言いにくそうに、
「いよいよ、僧が必要なのです。そのために寺を建立しておるところです」
「おり(私)は仏さんのことは、ようわからんので。海の向こうの
この尼さまの寺には
かつて、
「ソガさまが、
尼さまは静かに微笑んだ。
なにやら、駆け引きというものなのだろうか。
「ともかくも、今日は
天気も良かった。道も平坦だ。
ヒダの山育ちの
「……歩くの、早いですね」
「そう、ですか」
「元気で、何よりです」
「……」
ふわりと木の香が立ちのぼったような気がした。今でも、その背にかじりつきたいような思いが、ある。
(――あの
「
思い切って、
目の前の
「
「ご要望に応えられるかはわかりません」
返事が固い。
「……やっぱり、あなたの方は、なーんにも覚えていないんで?」
「気がつくと夢を見ていたような。そんな感じで」
実感がないのだろう。
今、そばにいる女が自分の子を
「なんだー。里でいちばんの不細工というから、覚悟しとったに。かわいいでないかー。なー、みんな」
いきなりぶちかましてきたのが、
「うん。うん」
周りの者がうなずいている。
「いや、なかなかの不細工じゃ」
見覚えのある老人が皆のうしろから言いよった。ヒダから、いっしょに都へ来た工人だ。
こいつが、言いふらしたにちがいない。
(絶対、復讐してやる)
「子は、いつ産まれる?」
「あと
「
その日のうちに
夜になっても
「もう、お帰りになっても」そう、志乃布が言うと、
「私の部屋でもあるので」と、
「あなたは、私の妻ですので」
「い、いつの間にっ」
いつの間にか、いろいろすっ飛ばして
「――あなたにとっての
「え、と」
「それで、勝手なお願いですが、その
「出家するってところは変わらんのですね」
「そうです」
せめてもの、ってことなのだろう。
「わかりました」
「では、それまでは、そばにいてくだせえ」
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