漫画time③


 二時間の格闘の末、疲れたのか江馬は目を閉じて横になった。

 汗をタオルで拭いていた雅は横になっている江馬に気が付くと、江馬に声を掛けた。


「あれ? もしかして寝ちゃいましたか、江馬さん?」


 江馬の肩を揺する。しかし、江馬の肩を揺すっても起きる気配がない。呼吸のタイミングが一定じゃないのが気になりますが、これは寝ているのでしょうか。数回揺すってこれはチャンスだと思った雅は江馬の髪に手を伸ばすと、そのまま優しく撫でる。江馬は雅の手を嫌がることもなく、雅に撫で続けられた。好きに撫でさせてくれる江馬に信用して貰ったのかなと雅は頬を緩めた。

 しかし、髪を撫で続けても呼吸が一定にならないことを疑問に思った雅は仕掛けることにした。


「本当に寝ていますか? 寝た振りじゃないですよね?」


 雅は自分の出ているところ二つを一つにするように持ち上げると、江馬の顔の近くに持っていく。ぱふんぱふんとその場で上下させていると、江馬が不自然に上下して鼻息を漏らす。江馬の鼻息が雅の双丘を撫でた。

 怪しさが確信に至った雅は、双丘を江馬の顔に押し付ける。すると間もなくして「Oh……」という声が丘の奥から漏れた。雅はそのまま江馬の顔に押し付け続けた。


「やっぱり起きてるじゃないですか!? 怪しいと思ったんですよ」

「>#$%&'$"\」

「何を言っているか分かりませんよ。どうして寝た振りなんかしたのかちゃんと言って下さい」

「>#$%&'$"\」

「早く言ってくれないと怒りますよ?」

「>#$%&'$"\」

「……もう怒りました。言わないとずっとこのままですからね?」

「>#$%&'$"\」


 江馬の鼻と口の振動によって突起部分を刺激されるのが思いの外気持ちよかった雅は理由をつけてそのまま続けた。理由があってするのとしないのとでは罪悪感が全然違うのである。

 しかし、気持ちよかった振動も少し時間が経つと弱くなっていく。

 どういうことだと不思議に思った雅は豊満なものを江馬の顔からどかすと、江馬の目は大きく開いていて大きく深呼吸をした。

 そこまでするつもりはなかったのに。雅の背中を嫌な汗が流れる。呼吸を整えた江馬は、雅の肩に手を掛けた。


「確かに寝た振りをしたような俺も悪いけど、声が出ない状況で声を出してないからって窒息を続けるのは酷くないかな?」

「反省してます。本当にごめんなさい。お、お願いですから嫌わないで下さい!!」


 雅がベッドを降りて、江馬に向かって土下座する。

 江馬は表情こそ優しく言葉も優しいが、逆にそれが恐ろしかった。酷い言葉を掛けられた方が楽とさえ思えた。

 今日出会ったばかりだけれど、他の男のように江馬がちょっとやそっとのことで本気で怒らないことは分かっていた。でも、今回は窒息の可能性があった訳であのまま私が窒息を続けていたら窒息死していた可能性もあった。いくら優しい江馬様でも、それを簡単に許してくれなどしないというのは私でも分かる。訴えられても仕方がない内容だ。嫌われる可能性なんてもっと高い。これでもし江馬様に嫌われたら直ぐにでも自殺をしてしまおうか。でも、どうしようも出来ない私は土下座を続けることしか出来なかった。

 必死になって土下座を続ける雅。少しして、雅の耳に春を駆ける爽やかな風のような優し気の江馬の声が届いた。


「反省してる?」

「反省してます。本当にごめんなさい。二度とやりません」

「それなら、同じように息苦しくなってもいいよね?」

「え?」


 流れが変わる。

 疲労のあまり継続不可能と判断して寝た振りをした江馬だったが、命の危機に曝されアドレナリンが大量に分泌した。つまり生存本能がバリバリに刺激されている状況である。

 雅は顔を上げると、タイミングを計ったかのように、自分が突起を押し付けたように突起をぐいぐいと押し付けられた。



 

 ブホ””ォォッ。



★★★★★


 太陽の出番も終わり、月の出番が回ってくる時間となる。

 ピンポーン。仕事を終えた凜はご機嫌な様子でインターホンを押した。

 夕暮れを眺めながら返答を待っていると、インターホンから聞いたことが無い声が聞こえた。

 

「こんばんは。江馬さんに聞いたところによると、貴方が凜さんですか?」

「あなたは誰ですか!! え、江馬に変なことしてないですよね?」


 誰だこの女は。

 江馬の家は女性の家のようだったけれど、昨日見た時には女性は居なかった。

 訪れた際にたまたまこの女が居なかった可能性もあるが、この女が侵入者の可能性がある。江馬と同棲している可能性もあるが、侵入者の場合江馬がどうなっているか分からない。

 凜自身侵入者だったこともあいまって、雅に対しての不信感を持つのは必然だった。

 念の為に警察に電話をした方がいいだろうか。


 携帯電話に凜が手を掛ける。

 それを見た雅は慌ててインターホン越しに声を掛ける。


「私は不審者じゃないですから警察に電話を掛けないで下さい!! この家の持ち主は私です。江馬さんとは同棲をしているんですよ!! 昨日家に居なかったのはたまたまで基本はこの家に居ますから」

「……分かりました」


 昨日この家にやって来たということは、江馬が話してこの女に伝えたということだろう。家の持ち主と嘘をつくのは難しいだろうし、この女が侵入者の可能性は低そうだ。

 私はズボンのぽっけから取り出したスマホを再びぽっけに戻した。


「それでは今から鍵を開けるので入ってきてください。江馬さんは今疲れて寝ているので大声を上げないで下さいよ?」

「……江馬は寝ているんだ」


 江馬がインターホンで出てこなかったのはそれが原因かと思いながら、私は鍵が開けられるのを待った。

 ガチャリ、ガチャ。

 鍵の音がすると、部屋の扉が開けられた。

 部屋の中からは江馬の匂いと雌の匂いが混ざった匂いが漂って来た。その匂いは私の匂いも含まれているが殆どが私の匂いでは無い。つまり、この女の匂いだ。

 私は扉から出て来た巨乳の女を睨んだ。


「初めてですね。話したいことがあるので、ぜひ部屋の中に入ってください」

「失礼します」


 扉から出て来た女は笑っていたが、目は冷たく私のことを生ごみを見るような目で見ていた。私のと比べて一回り大きな果実を持つこの女。私と見た目の属性は違っているが、心の属性は同じなのかとふと思った。



 



 

 

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