とある宅配員の女性
この小説は喉を締める行為を推奨しているものではありません。
冗談でも、やめましょう。
首絞め、ダメ、絶対!!
首絞めを絶対にやらないという人だけ、下に進んで下さい。m(_ _)m
――――――――――
今日は夜に流れ星が流れるということで、同期で親友の舞と仕事が終わった後に私の家に呼んだ。特に予定が無かったようで、舞は連絡をするとすぐにやって来た。
舞は流れ星を見るというより私と酒を飲みに来たようで、色々な書類のつまみと数本の酒を買って来た。車で来たようだし、今日はお泊りをするつもりのようだった。
舞と談話をしながら流れ星がいつ流れてきていてもいいように空を注意していると、一筋の光が夜空に現れる。それは朝テレビで放送されていた流れ星だった。流れる星というだけあって、夜空を滑るそれは酷く幻想的に目に映る。
「男に会えますように、男に会えますように、男に会えますように」
「その感情を失ったような顔で流れ星にお願いするの止めなさい。親友の私でも、ちょっと怖いぞ」
「それぐらい本気なの!! もう。流れ星が行っちゃったじゃん」
私が三回言い終える前に、流れ星は消えていた。
この時の為に、仕事の合間合間で今日練習していたのに。
活舌をどうしたらよく出来るのかという動画を、声優を目指す訳でもないのに何度も再生しては練習したのに。
二回目を終えたところで流れる星は既に消えてしまっていたので、舞に話し掛けられなくても言い終えるのは無理だっただろう。だが、思い通りに行かなかった時に人は八つ当たりをしたくなるもの。八つ当たりの矛先は、舞に向かった。
四つん這いになる。その体勢のまま歯を剝きだして怒りで興奮した犬のように舞を睨む。
舞は私の様子に苦笑いして、つまみとして買ってきていたジャーキーをこちらに放り投げて来た。本気にしている様子はなく、遊んでいるようだ。私も本気じゃない。
遊びに使われた可哀想なジャーキーを落として無駄にははしたくなかったので、私は犬のように口を開いてジャーキーに飛びつく。ジャーキーは見事私の口の中に納まった。
ジャーキーに含まれていた塩が口の中で溶け出す。しょっぱさを感じながらジャーキーを奥歯で噛んだ。数回噛み終えた頃には肉の旨味と塩味で口の中は満たされていた。まだ味のありそうなジャーキーを塩っ気のある唾液で飲み込む。隣からは拍手が沸いていた。
「凄いじゃないか、
「違うに決まってるじゃん!! これ、結構腰にくるんだよ? 姿勢も普段することなんてないからキツイし。多分、明日は腰の筋肉痛だよ。」
「フフッ。腰が痛いなんて、婆さんじゃないか。杖でもついた方がいいんじゃないか?」
「そんな訳ないよ!?」
舞は私が流れ星に向かってお願いをする練習をしていたことを知っている。
舞は人を揶揄うのが好きだ。
一見冷静そうに装っているが、目は笑っていた。
慌てて訂正する私を見て、舞が吹き出す。
吹き出した舞を私は睨んだ。
私は二十代前半だし、なにより舞と私は同じ歳だ。私を歳で笑うというのなら、舞自身のことも笑っているということになる。吐き出した言葉は私を襲うのと同時に反転し、舞のことも襲うだろう。それに私が婆さんなら、舞も婆さんだ。
やーい、舞婆さん。と私が面白がって口にすると、無言で舞に首を掴まれた。私が言い終えた後から、首を締めるまで流れるように綺麗な動作だった。一応息が出来ない程強くはないので息は出来る。それでも、いつもに比べたら呼吸はしづらかった。
私がやられた時はこんなことしてないのに酷い!! 暴力反対!!
声を出そうと思っても喉が閉まっていてよく伝わらないので、手足をバタバタとさせて行動を非難する。だけど、私より舞の方が力が強くて意味は無かった。ずっとぶんぶんしていると、満足したのか解放された。
「あー笑ったわ。――っておい、次の流れ星が来たぞ」
「男と会えますように、男と会えますように、男と会えますように」
「おっ、今のはいけたんじゃないか。よかったな」
今回の流れ星は前の流れ星よりも長かった。私が三回目を言い終える瞬間には、まだ流れ星が夜空に存在していた。次の瞬間には流れ星は消えていた。
「よっしゃぁぁぁぁ!!」
「おいおいそんなにはしゃぐなって、酒臭いだろ」
流れ星に言えた喜びで私より少し身長の大きい舞に後ろから抱き着いた。舞は私に抱き着かれて恥ずかしそうにしている。揶揄うのは好きだが、揶揄われたり想像してないことに弱いのだ。少し酒臭かったけど人肌が心地よくて、そのまま少しの間抱き着いていた。舞も恥ずかしそうにしながら、私のことを落とさないでくれた。
その後は気分が良い私が舞に酒を九本進められて泥酔。
舞も十二本くらい飲んで泥酔。
倒れるように布団に横になった。
流れ星にお願いをしても、叶わない。
内心そんなことをお願いをした私自身思っていた。
せいぜい、もしかしたら神様が気まぐれで私のお願いを叶えてくれるかもしれないと思うくらいだった。朝テレビで見て、やりたくなったというのが正直なところだった。
だから、そこまで期待していなかった。
それなのに――
「幸せそうに寝ているな」
この数日間で男性のような人に宅配先で出会い。
男性のような人に何度も宅配の際に会話することが出来て。
あろうことか、男であるか確かめる為に家に侵入したら男で。
その男に服を脱がされて綺麗に拭かれるなんて、ラノベにもないような経験は幾らか最高過ぎはしないか。
「#$&%?@#$%」
「ちょっと待て、鼻血だけは止めてくれ!!勝手に体を拭いたのは謝るから!!」
疲れたようなとも焦ったようなとも捉えられる様子で男の人はタオルを投げてきた。だけど、女の生理現象上どうしようもすることなく鼻血をぶち撒いて気絶した。
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