野営
* * *
機属の残骸に囲まれながら、ナイトたちは火を
昼間は
「それにしても。派手に壊したもんだ」
カナイは黄金の瞳を機属の残骸の山に向けた。
壊した張本人であるナイトは頭をかいて照れ笑う他にない。
「すいません、派手にやっちゃって」
「いや、いい。むしろ食いやすくて助かる」
「……食いやすい?」
ナイトが疑問符を浮かべる端で、カナイの抱える十字架が“口を開けた”。
獣のような牙の列──というよりも、何かの炉心が渦を巻いているような。
途端、始まったのは〈ミソパエス〉による食事であった。機械の十字架が機械の残骸を吸い込み、炉心の奥に引き込む様を、ナイトは驚愕の瞳で見届ける。
煙草を吸うカナイは事も無げに告げる。
「私らの戦装は、機属を現動力として運用されてるんだ。だから、定期的にこうやって機属の鋼材や燃料を補充させるってわけ」
なるほど、などと手を打って感心することもできない。
彼女たちの保有する兵器の意外な事実に直面し、「ならば自分の
「カナイ先輩」
「カアス、そっちは済んだ?」
「周辺探査は一通り。機属の反応は皆無でした」
これで安心して夜を越せますと微笑む銀髪紅眼の修道女──あらため修道士。
「どうかなされましたか、ナイト様?」
「いや、その、カアスの恰好、というか、修道服は……その……」
これはセクハラ発言に該当するのではという思いと、男性が平然と女性の恰好をしている事実に、頭が混乱を余儀なくされる。
ナイトのしどろもどろな質問に対し、カアスは平静な声で応える。
「ご安心ください、ナイトさま。この服装は、私の趣味です」
「趣味なのっ?!」
「冗談です♪」
「冗談なの!?」
その場で二回はすっ転びそうになる少年の様子に、含み笑いを大きくするカアス。
見かねたカナイが軽く釘を刺した。
「こら。あんまりナイトをからかうんじゃないよ、カアス」
「すいませーん、ナイト様の反応が、おもしろくって……それに」
カアスは笑顔のうちに冷たいものを含ませて言う。
「私の恰好に疑念を持っても、それを揶揄したり忌避したりする殿方は初ですからね♪」
彼は真実満足そうに頷きつつ、ナイトと握手を交わす。
そんなカアスの言を補足するように、敵い馳せt名してくれた。
「ったく。──カアスや私の修道服は、高位戦装保持者の証として授与されるものだ。自分の意思でどうこうできるもんじゃない。詳細が知りたけりゃ〈ミソパエス〉と〈レリウーリア〉に直接聞くしかない」
聞けたらの話だが、と言って、カナイは〈ミソパエス〉の食事を切り上げる。残りは〈レリーウーリア〉──カアスの分に取っておくらしい。
「で。カアスよ。何があって〈カヴォート〉に追いかけられてたんだ、おまえ」
「それがですね──」
二人が話し込んでる隙に、ナイトはナイトで調べたいことに奔走する。
ナイトは視界端にあるステータスウィンドウを手早く開き、「
「──これは」
ナイトは〈カヴォート〉の残骸を手に取ると、アイコンが浮かび上がることに気づく。
その内容はこうだ。
『機神ジズの格納スペースに、指定のアイテムを収納しますか?』
「Yes」か「No」の選択肢が出て来て、ナイトは数秒迷った末、「Yes」のアイコンをクリックしてみる。
すると、手中にあった鋼材──〈カヴォート〉の残骸が消え失せ、「
(ドロップアイテムは自分で確保する、って感じなのかな?)
驚きとも畏れとも形容しがたい気持ちで事象の整理をし終えると、ナイトは意識を二人の方に戻した。
どうやら残った機属の残骸について意見を交わしているらしい。
「残った〈カヴォート〉の残骸は、ユダ地区に搬送しよう。きっと役に立つだろ」
「けれど、この質量ですよ? 先輩とボクで牽引しても、一体分が限界かと」
「あー、だよなー。もったいねえよなあー」
「……あのー」
遠慮気味に手をあげるナイトに、二人の視線が向けられる。
「どうした?」
「なんとかなるかもしれないです、よ?」
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