救助
* * *
悲鳴じみた機械音の発生を受けて、二人は即座にオアシスを駆けだした。
そして、大気を引き裂く竜巻のような重低音──大量の足音が近づいてくる。
「あれは!」
白い巨大な機体──頭上には輝く光輪が二つ回転している──全高三十、全長にして五十メートルは優に超えるだろう巨躯が、節足類を思わせる幾百の肢で
ナイトは声を荒げてたずねる。
「ジズ! あの
『はい。解析──外部情報から参照。九十七%の確率で、第六等級機属〈カヴォート〉と推定』
第六等級。
ということは、ウツ地区を襲った〈ツェデック〉よりも四つ格上の相手ということ。
「何してる、さがれナイト!」
オフロードバイク状態だった〈ミソパエス〉を、パワードスーツに戻し終えたカナイが機体を浮遊させながら告げる。
「シスター、あの機属は!」
「知ってる!〈カヴォート〉だろ! ちと手間はかかるが、一体くらいなら何てことねえよ!」
頭部装甲をはめて空中を滑走していくカナイ。あっという間に〈カヴォート〉の横っ腹をビームサーベルで抉りきると、大量の鋼材と燃料が臓物や血飛沫のように
機属が横槍をつかれたタイミングで、赤い飛翔体に載っていた人物がオアシスに降り立った。
「だ、大丈夫です……か?」
ナイトは戦闘時だというのに、しばしの間その清純な美の結晶──女性と思われる人物に目を奪われた。
カナイと同じ白と黒の修道服。太陽光に燦然と輝く、長い銀髪。ルビーのような紅の瞳。腰のスリットから覗く太腿の艶。玉の汗を滴らせて息をする肌が上気する様すら
「す、すいませ……みず、水をすこし、わけていただけないでしょうか?」
「み、水ですね!」
ナイトは即応した。
自分の水袋の蓋を開けると、銀髪紅眼の人物に手早く飲ませる。
「ふぅ──あ、ありがとうございます。朝から追いかけられっぱなしで、たすかりました」
「いえ、と、とんでもありません」
「私の名は、カアス、と申します。あなたのお名前は?」
「あ。ナイトっていいます」
「ありがとうございます、ナイトさま。しかし、まさか先輩と、シスター・カナイと、このようなところで巡り合えるとは」
「え。シスターをご存じなのですか?」
無論と言って、銀髪の人物は紅玉の十字架を掲げ示す。
「私は第七戦装〈レリウーリア〉に選ばれた者ですから。である以上、その
紅玉の十字架は、あっという間に黒白の修道服を飲み込み、紅玉のパワードスーツを展開。
カナイの〈ミソパエス〉に比べれば重厚さに欠けるが、それでも、機属に対抗する戦装として十分すぎる威を発露していた。
ナイトが畏怖と憧憬に目を輝かせかけた、直後だった。
『警告』
ジズが警告音声を発したと同時に、地面が激震した。
ほとんど直感で〈レリウーリア〉を発進させたカアスは、ナイトを連れて大地を離れた。
「そんな、馬鹿な!」
カアスが驚嘆したのも無理はない。
ナイトたちがいたオアシスの底から、新たに〈カヴォート〉が“二機”、姿を現したのだ。
一機を相手に奮戦しているカナイも、この状況に歯噛みする。一機だけならまだしも、合計三機を同時に相手取るなど至難の業であった。
「……」
そんな二人の様子に、ナイトは決意したようにひとつ頷く。
「ジズ、顕現シークエンス、発動」
『了解』
〈レリーウーリア〉から自分の意思で手を離したナイトは、〈カヴォート〉たちの狂暴な牙列に飛び込む寸前、ナイトの全身に赤い線が走る。
瞬間、
赤い骨組みが発生し、一秒もしないうちに赫い人型の鋼鉄が展開され、それは自由落下の慣性のまま、一体の機属をバラバラに蹴り砕いてみせた──、
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