第14話
ジリジリと蛇が詰め寄ってくる。明らかに知能的な動きをしている。モンは懐中電灯を持って次の攻撃に備え、構えている。蛇が口を開いてモンに向かって飛びかかって来た。そのタイミングでケンが一眼レフで写真を撮った。蛇は一秒とない時間止まってしまった。このタイミングで一瞬でも止まることは戦況が大きく傾くだろう。モンは両手で持った懐中電灯を振り上げ、止まった蛇の下顎に強烈な一撃をお見舞いした。蛇は急激に浮き上がり、天井にぶつかり、そのまま地面に落ちた。
蛇は、周囲に目を凝らしたように見えた。瞬きを一度して大きく見開いた真っ赤な目は、俺と目が合っていた。…来る。そう思った時には、目の前に蛇の大きな口があった。モンもケンも間に合わなかった。死んでしまうのか…。
そう思いかけた時、大きな影が横切り蛇の口は消えていた。壁に何か打ち付けられたような大きな爆音がトンネルに響き渡った。あまりの大きさに耳鳴りがするほどであった。蛇は地面にだらりと横たわり、蛇より一回り大きな鷹がそこにはいた。蛇の頭と胴体を鉤爪でしっかりと押さえつけ、黒い鱗を啄むよう突いている。蛇は突かれても反応がほとんどない。それほどの衝撃だったのだろう。
「今だよ!祓詞!」
荒岩さんの大きな声にやっと反応して祓詞を読み始めた。祓詞が読み終わると蛇は神々しい光に包まれ消えてしまった。
「危なかったね!大丈夫!?」
「はい…なんとか…」
俺は少しぼーっとしていた。初めて魂をあの世へ送ったのだ。そして、おそらくだが自分もあの世へ行くところだった。
「モンくん!ケンくんも大丈夫!?」
「私は大丈夫です」
「ぼくもなんとも」
2人もそう言うが、危うく肉体と切り離されるところだったのだ。言葉には力がなかった。
「今日は、家の近くまで送ろう!ゆっくり休んでくれ!明日は境内の掃除とかしながらすごそう!」
荒岩さんも気を遣ってくれているのがわかった。その後、神社にある黒いハイエースに乗せてもらい、家の近くの駅に降ろしてくれた。道中、みんな疲れていたのか何も話さなかった。荒岩さんもいつも大きな声で話すのに何も話さなかった。道が混んでたせいもあったか、帰るのに時間がかかったような感じた。駅に着くと空は夕暮れ、またオレンジと紫の混ざり合う空。この空はきれいで好きだが、少し不気味に感じてしまうのだ。とぼとぼと歩きながら家まで歩いた。
死んでいたかも。この言葉が頭の中になん度もよぎっていた。
ダブルソウル ぜろさん @030303
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