第12話
夏休み初日。朝は素早く目覚めことができた。なぜなら、今日は全員強制参加の補習があるからだ。なぜ…夏休みなのに…。そんなことを考えながら、学校に向かう。
モンは昨日から懐中電灯がブラックライトだと言うことを引きずっているのかよろよろついてきている。一方、ケンは楽しそうに写真を撮るふりをして遊んでいる。あの時は弓矢を想像したのに、なぜカメラと懐中電灯になったんだろう…。想像力が貧相なだけか…。
「武、なんで急にモンと同じ歩き方になってるの?」
「あぁ、ちょっとショックなこと思い出して…。」
「よう!武!気持ちの悪い歩き方だな笑」
聖矢が後ろから肩を組んできた。
「ちょっとショックなことを思い出して…。」
デジャブのように同じことを聖矢に話す。
「なんだよ?ショックなことって」
「いやぁ、自分の想像力って貧相だなぁって。」
肩に力が入らずふらふらとしながら話す。
「あー、昔から美術とか図工の時にはごみみたいなの作ってたよな!」
聖矢は昔からの幼馴染でよく気が合う。この歯にきぬ着せぬ物言いは俺の中では、本人には言わないが気に入っているところだ。
「やかましいわ。」
ちょっと低めのトーンで言い返す。
「すまん!すまん!」
このやりとりが昔から居心地が良かったりもするのだ。学校の玄関で靴を履き替えながら聖矢は続けた。
「さて、今日も補修頑張るかー!そういや、部活終わった後何してんのよ?久しぶりにゲームでもするか!」
「すまん、短期バイト始めたんだ」
久しぶりに遊べるかと思ったが、こればっかりは仕方ない。
「まじかよ。なんのバイト?」
「…神社のバイト?」
「…え、何するの?掃除とか?ありがたやありがたや」
聖矢は少しにやけていた。
「まぁ、そんな感じか。…バカにしただろ」
「してないって!そしたら、また今度な!」
聖矢はバツが悪くなったのか、先に走って階段を駆け上がっていった。
あっという間に補習が終わって昼ご飯を食べて部活に向かう。もうすでに、矢を放つ音が聞こえて来た。南先輩だ。弓道部の一つ上の女の先輩でとても丁寧に教えてくれる先輩だ。短髪で顔立ちはキリッとしているのにどこか優しげなのだ。
「お疲れ様です」
「あ、武くん!はやいね!」
挨拶を終えるとまた南先輩は集中して矢を放っていた。一瞬の切り替える素早さはさすが先輩といった感じだ。しかし、調子が悪いのかなかなか的に当たっていないようだった。本人も納得のいっていない様子だった。先輩にしては珍しく感じられた。
そんなことを考えながらもアップをして、弓の練習を始めた。バイトのことを考えてたせいか自分も集中力があまりなかったような気がする。2時間ほど練習して部活を切り上げ、バイトへ向かった。
いよいよ、人生の初バイトだ。意気揚々と神社の中の社務所に入ると荒岩さんが何やら分厚い冊子を持っていた。
「今日は色々勉強してもらうねー!」
また、勉強するんだ…。バイト初日なのに…。
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