第11話

 「…短期バイトねぇ。まぁ、いい社会経験になるんじゃない?ただちゃんと勉強するんだよ!」

 母さんに伝えたら、心配していた未来と全然違う未来だった。


 「よかったじゃない!バイトできるようになって!」

 モンがニコニコしながら話し始めた。

 「そういえば、ぼくモンの特性見てないよ!」

 「確かに俺も見ていない…」

 ケンと俺がモンの懐中電灯を見ながら話を始めた。

 「私が思うに、これを当てたら魂や精神が薄くなっていって消えると思う」

 美しい顔には似合わないニヤニヤとした表情に怖さを感じた。

 「そ、そんなわけないしょ!」

 ケンが少しビビっている。

 「なら、試してみるわよ!」

 ムキになっなモンがケンに向かって懐中電灯をつけた。

 「おい!」

 慌ててとめようとしたが、間に合わなかった。ゆっくりとスローモーションになった気がした。ケンは腕を前に出し、光が当たらないようにしていた。光がケンに当たる。ケンは終わったと思ったろうり俺も自分の精神がなくなると思った。廃人になるんじゃないかとか色々考えてしまった。

 しかし、幾ら時が流れても何も起きなかった。

 「…あれ?」

 ちょっと涙目になりながら、ケンは口を開いた。 

 「…びっくりさせんなよ」

 強がってるのがよくわかる。

 「えー、ならこの懐中電灯なんなのよー!」

 そう言うと当たりを照らし始めた。すると、手の跡や足の跡が見えてきた。

 「…これってブラックライト的なやつかな?」

 「ブラックライトってなによ」

 俺の呟きにモンが聞き返して来た。

 「なんか、血の跡とか指紋とか見えるようになるやつ」

 「あー!…でもなんかしょぼくない?」

 「ぼくの一眼レフよりしょぼいかもね」

 その言葉を聞いてショックだったのか、また端っこで体育座りしている。またケンがトントンしている。今回はケンが悪いのだが。まぁ、確かに魂や精神を消してしまうと考えてしまっていたからしょぼく感じているのかもしれない。実際に使ってみないとわからないだろうし。

 「俺はそんなことないとは思うけどね」

 「うぅ、武ぅー」

 こっちを振り向いて涙で顔がぐしゃぐしゃになっているモン。トントンしているケン。

 「まぁ、今日は疲れたし。明日は部活もあってバイトも行くから寝よう!お疲れ様、モン、ケン」

 そう言って電気を消した。



 その頃、暗い夜、終電まではまだ数本の電車が残っているぐらいの時間だった。この駅は武が利用する駅と同じ路線ではあるが、オフィス街にある駅の一つだった。電車を1人の男がホームで電車待っていた。灰色のスーツを着た男が電話をしている。切り終わると一言。

 「また、色々頼まれてしまったねぇー」

 そう言うと、かけてるメガネを外し、ポケットからメガネ拭きを取り出してレンズを磨いていた。

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