第4話

 この人はいつも通勤ですれ違うおじさん…。近くにはパソコンが宙に浮き、クラゲがくっついている。

 隣を通り過ぎる自転車に乗っている同じ学校の男子高校生には、筋肉質な丸坊主の短パンにタンクトップの男。手には絵の具の筆が束にまとめられた物を持って自転車に遅れまいと駆け足で走っていく。

 反対車線に停まっているゴミ収集車から作業員が出てきた。オレンジの空き缶と黒い空き缶が小刻みに跳ねたり転がったりしている。


 「なにこれ…」

 「すごいでしょー!私の力!」

 急に得意気話し始めるモン。完全に機嫌が治ったようで安心した。

 「なんでこんな風になってるんだよ。ケンやモンみたいに人型になってるんじゃないのか」

 「それは、ぼくが説明しよう。魂や精神はその人の経験や生き方などが大きく影響するのさ!特に精神はその時々によって色、形、匂い、その容姿が変わりやすい。魂はその積み重ねだからあまり変化しないことが多いかな!まぁ前世の影響とか先祖とか色々関係したりするんだけどねー」

 「ならなんで俺の精神や魂は人なんだ?」

 「私が思うにー、人を大切にしていたり人間関係が案外狭いから友達が欲しかったりとか思っている分、人型になったんじゃないかな?」

 「俺のコンプレックス的なのもそのまま出たりするんだね…。ちょっと恥ずかしい。ケンが子どもなのは精神が幼いということなのかもしれないってことか…」

 ということは、さっきの筋肉男が示すのは憧れとかなのかな…?ゴミ収集車の人は仕事のことを考えていて…。クラゲは…好きなのかな…?んー、全くわからん。

 考えがまとまらないせいか、少し肩が下がってしまった俺を見かねたのかケンが目の前に現れて話した。

 「まー、そうとも言えるね。でも歳の割にぼくがしっかりしているのは、ある意味中身は成熟しているのかもよ?」

 「それもそうか…。あのさー、モンちょっと目が疲れてきたから元に戻してもらってもいいかな?」

 「はーい!おーけー!」

 そう言うとモンはまたゆっくりと俺の目を覆い隠し、顔から手を離してくれた。すると、奇妙な世界は元通りとなっていた。

 

 そんな説明を聞いたり考えたりしているうちに学校に着いていた。

 「おはよー!武!」

 「おぉ、聖矢おはよう」

 「武、なんか疲れてないか?あと2日だぞ?2日!」

 相変わらず元気な聖矢。夏の暑さにも負けず、この元気は羨ましい限りだ。まぁ、昨日から色々あったから疲れているのも無理はないだろう。上靴に履き替えて、教室に向う道すがら聖矢に思わず聞いてしまった。

 「聖矢、幽霊っていると思うか?」

 「へ?」

 階段を超えた踊り場で、聖矢は振り返りこちらを怪訝そうな顔で見ていた。


 

 

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