第3話
またジリジリと夏の暑さを感じる。明るすぎる日差しに目が覚めた。外からは蝉の声が聞こえてくる。夏休みまであと2日か。というか昨日は…。
「!」
横を見ると例の2人がいる。モンは勝手に勉強用の椅子に座り、ケンはまたふわふわと浮いている。本当に奇妙な光景だ。
「やっぱり、俺見えるようになったのか…」
「そういうことだね。よろしく、武」
「私もよろしく、ですね!」
昨日より適応している自分が不思議だ。とりあえず、身支度をしてご飯を食べよう。その前に…。
「あのモンさん…」
「なんですか?初めてちゃんと話しかけてくれましたね!私嬉しいです!なんでしょう?」
「言いにくいんですけど、一応霊?魂?でしたっけ?に朝シャンを見られるのは少し恥ずかしいので、リビングでも部屋でもいいので朝シャンの時は一旦離れてもらってもいいですか…」
「ぶっ!ははは!モン!折角話しかけてくれたのに!そんな悲しいお願いなんて!」
ケンは笑いながら空中で宙返りしている。モンは下を向いて長い黒髪の間から顔が赤らんでいるのが少し見えた。
「…そんな。別に体を魂に見られるなんで別に大したことないじゃない…。」
モンは走って扉の真ん中をすり抜けて廊下に出て行った。少しシュールで面白かったことは言わないでおこう。
着替えを持って朝シャンを終えた。リビングに行くと母が朝食の準備を終えていた。お味噌汁にご飯。昨日の残り物だろうかハンバーグがある。残り物というか、食べなかったご飯だ。
「おはよう、武。珍しいわね。ご飯食べないで寝るなんて」
「あー、なんか色々あって疲れてた」
「そう。夏休みまでもう少しなんだからあんまり無理するんじゃないよ」
「んー、わかった。いただきます」
モンは体育座りをしてリビングの端でしょんぼりしている。ケンはモンの肩をぽんぽんと叩きながら励ましている。案外、お互いに優しいところがあるのだろうか。
「ごちそうさまー」
「あんた本当に食べるのはやいね」
「いってきまーす」
「はーい、気をつけてね」
学校は徒歩5分ほど歩き、図書館を通り過ぎた先にある駅まで行く。電車に乗って3駅離れたところにある。そこからまた10分ほど歩くと着くのだ。マンションやビルがあるがそれほどうるさくはない。
フワフワと浮いているケンに歩きながら小声で聞いてみることにした。
「あのさ、ケンとモンって俺の精神と魂なんだよね?」
「うん。そうだよー」
「ということはさ。他の人にも精神や魂があるってことだよね?」
「うん。そうだねー」
「ということはさ。他の人の精神や魂も見ることができるの?」
「うん。見れるよー。…見てみる?」
「まぁ、ちょっと興味あるかなー」
「なら、私の出番だね!」
それまでしょんぼりしていたモンが揚々と話しかけてきた。モンの手が俺の目を覆い隠し、ゆっくりと顔から手を離した。
その目線の先には、通勤通学する人々の近くに空中浮遊する人や言葉で表現し難い生命体が存在していた。魑魅魍魎というのだろうか。そんな字面がこれほどに適することはないだろう。いつもの通学路がまるで別世界に、本・映画・ドラマそんな世界に迷い込んでしまったかのように見えた。
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