第2話

 どれくらい時間経ったのだろうか。2人の黒服がなにか話し始めた。

 「ぼくらのこと見えてるよね?」

 「おそらくね。こういう時なんて話しかければいいのかしら。」

 不思議と遠くに聞こえる。周りの音が一切聞こえなくなったような気がしているが、語りかける言葉がぼやぼやとしているように感じた。

 「あのー、はじめまして武。ぼくは、君の精神であるケン。んで、この見た目はすごく美人だけど性格に難がありそうなのがモンって言−−」

 

 気が付いた時には荷物を全てまとめて走り出していた。空が少しオレンジから紫、黒に変わり始めていた。星が空に見え始め街灯に光が灯り、住宅街の家々に明かりがともる。必死に走り家に辿り着いた。ポケットから鍵を取り出し玄関を開け、あわてて自分の部屋に入り電気を付けた。

 この時間は、誰も帰っていない机の上には晩ご飯が置いてあるはずだ。ベットで横になって少し部屋でゆっくりしよう。疲れているんだ。もう少しで夏休みだし、今日は暑すぎた。だからあんな変な幻覚を見たんだ。


 「人が自己紹介してるのに、そんなに走らなくてもよくない?」

 「私だって、何も話せてないのに勝手に行くんだもの。」

 また、こいつらだ。なぜ部屋にいるんだ?なぜ追いついているんだ?自分がおかしくなったのか?

 「な…なんだ…なんなんだ…」

 全然声が出ない。怖いのか?この歳になって、いや怖い、怖いだろ。死ぬのか…?

 「まぁまぁ、落ち着いて。ぼくは君の精神なんだってそれがたまたま見えるようになったのさ。」

 「私は、あなたの魂。モンよ。性格に難はないから。」

 そういうと美女は男の子を睨みつける。男の子は、目線を逸らし窓の外を見てしらばっくれている。

 「…い…意味がわからない…」

 「まー、簡単に言うと霊感が身についたってことだと思えばいいよ!ぼくらはあなたの守護霊みたいな感じ!」

 「なかなか、いい説明じゃない!子どものくせに…!」

 「ぼくのことすぐ根に持つよね?やっぱり性格に難あるんじゃないの?」

 「何よ!だいたい、あんただって−−」

 ベットの上に物が落ちるような音がした。武がベットに倒れ込む音だった。小刻みに身体が跳ね、ベットに緩やかに沈み込む。武にしか聞こえない喧騒が、武の中で遠のいていった。


 「ぼくの説明いい線いってたよね?」

 「んー、私から見ても中々だったわよ?でも急に霊みたいなのが見えるようになったらこうなるかもね」

 「それはそうかもね。明日また話せばいいよね」

 「そうね。今日は私たちもゆっくりしましょ」


 



 

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