第11話 美和子1
よくよく考えると離婚後、母は6時間のパートで
私たちの生活を支えていましたし、決して贅沢ではありませんでしたが
かと言って本当貧しいと言う生活でもなかったのを覚えています。
離婚後も落ち込まずに、いつも笑顔で楽しい家庭だったことも
記憶にあります。もちろんそれは無理しての笑顔だったかもしれませんが
一般的に世間で言う離婚後の生活とはかけ離れていた感じはしました。
そんなことを考えていると
美和子ちゃんが
「お酒お持ちしましょうか」
「あ!!そうだね。日本酒でももらおうかな」
「日本酒好きなんですか?」
本当は好きなのかも知れないが、親父がいつも日本酒を飲んでいたし
あまり感覚的には好きではなかった。
「まぁね」
「私も好きなんですよ。」
「へ~~女性で好きなのって珍しいんじゃない?」
「父が好きだったから・・・あたしもね」
「そうなんだ。なんか地酒でももらおうか?」
「乾坤一なんかおいしいですよ」
「じゃぁ それお願いします」
「は~~い」
乾坤一は母の実家の近くの村田町のお酒で
よく親父が飲んでいたお酒でした。
知らず知らずに親父に似ていくのに嫌悪感を抱きながら
美和子ちゃんに注がれた酒を飲んでいました。
お店の雰囲気、女将さんの接客 そして料理と本当心地よく
明日もまた来ようと思い美和子ちゃんに
「お店明日もやってるの?」
「定休日は日曜日です」
「そうか、明日も美和子ちゃんの顔見に来ようかな」
酔っているせいか、女性にしゃれた言葉を言える自分にびっくりしながら
答えを待っていると
「明日、明後日休みなんです。でももっとかわいい子来ますよ」と
普通に返した言葉だったのでしょうが、昭には迷惑な酔っ払いのお客退治のように
聞こえた。
今までのほろ酔い、ハイテンションが急にさめていくのを感じました
乾坤一を飲み干すと、急にボロアパートが恋しくなり
お会計をお願いしました。
美和子ちゃんが会計をしてくれて
「また来て下さいね」営業の言葉を背にそのまま帰りました。
家について気だるい体をベットに投げだし
「んなわけねーよな」
今まで28年間一回ももてねえし、軽いめたぼだし
素人童貞だし・・・
「ハハハハハ・・・」
なんか自分が惨めで皆から取り残されるような不安で一杯になった。
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