第12話 美和子2
居酒屋「粋」
「美和ちゃんお疲れ様」
「は~~いお先しますね」
美和子は帰りの地下鉄に乗りながら「昭」のことを考えていた。
父親と重ねていた。美和子は小さい頃から父を尊敬していた。
今は肝硬変を患い病弱だが頼もしくて、やさしい父には変わりは無かった
美和子の父は、大手の証券会社に勤めており、ファンドの運営 為替部門にいた。
為替の投資に関しては、一目置かれており、一匹オオカミ的な存在でもあった
元々は本社勤務(名古屋)での為替投資だったが、生え抜きの一匹狼ゆえにどうも部下を使うのが苦手で、挙句の果てに上司と意見が対立するととことん曲げない
会社からすると本当に扱いにくい人物のためか、実家のある仙台に転勤になり
デスクを預けられ、月のノルマだけを課せられていた。
もちろん自分でも為替投資はやっているが、これは会社はご法度なので
美和子の友達の口座を使い、結構な金額を稼いでいた。
美和子の母は、一回目の出産は胎盤剥離で、何とか一命は取り留めたものの
体が弱くなり家では起きたり寝たりの繰り返しだった
週3回母の妹さんが来て美和子や父の身の回りのことをしていたため、自宅でゆっくり休んでいた
美和子は大学病院の治療室で、帝王切開での出産。もちろん未熟児で生まれた
その後は元気ですくすく育ったが、母親の方は出産を期に入退院を繰り返して
美和子が10歳の時亡くなった。
それから父親と一緒に暮らしている。
父親は息子が欲しかったのか、美和子には中学から経済を教え
為替、株などの知識も教えていった。
もちろん美和子自身も、父親の期待を裏切らず東北大学の経済学部に
在籍中で、ゆくゆくは大手の金融関係に進む予定である。
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