第8話  お墓参り

「そうだ!!お墓に行って見よう」


母親のお墓は仙台から南へ30kあまり。大河原と言う田舎町にある


昭は、急いで原付に乗り、母が眠っている最言寺に向かった

なぜかうれしく、小学校の遠足の前夜みたいな気持ちで原付を走らせた。


1時間あまりでお寺に着くと、お墓参りとは関係の無い季節であり

お寺はひっそりとしていた。

母のお墓は墓地入り口を真っ直ぐに行き、大きなお墓の前を左に

曲がると直ぐある。

昭は小さい頃、母と一緒におばあちゃんの墓参りの時にこの大きなお墓の

横に隠れて母をよくびっくりさせていたのを思い出していた。


しかしこんな大きなお墓はよっぽど名家の人なんだろうな

と思いながら母のお墓に向かった


(後にこのお墓には昭自身が訪れることになるとはこの時は知らない)


迷わず母のお墓に行くと10年もそのままなのに綺麗にされており

住職の几帳面さが出ていた。


お墓の前で手を合わせると、涙が止まらず「おかあさん」と

思わず大きな声で叫んしまった。

涙が止まらずうずくまってしまった。


泣き疲れると、何も持ってこないことに気づいた

花も、お線香も・・・ごめんね、母さん

近くで買ってこなくちゃ!!そうだ母の好きだった「うな丼」

も買ってこよう。

そう思い原付を止めた場所まで歩いていくと、物静かな住職さんに

呼び止められた。


「君は確か昭君だったかね」

「ハイ そうですが」

「そうか 立派になったね」

「どうして私の名前を??」

「君の母親が亡くなった時、まだ確か学生だったよね」

「ハイ、高校3年生でした」

「そうだったか、あの時はお気の毒にね。君のお母さんは、私と幼馴染でね

よく境内で遊んだもんだった。」そう言うと住職は昔話を始めた


母の実家は大河原。それは東京での大空襲があり疎開のため

この大河原に引っ越してきたのが始まりで、

私からするとおばあちゃんの時代となる

大空襲で逃げる時におばあちゃんは、かなり酷い怪我をしたみたいで

子供が一人しか授からなかったそうです。


道理で身寄りがいないのがこれでわかった。


住職は、母ともう一人の幼馴染とよく3人で遊んだそうです

もちろん母が一人っ子だったこともあるでしょう。

母が高校まで3人は仲が良かったそうです。

高校卒業後、母は仙台の学校に行き段々疎遠にはなっていきましたが

年賀状のやり取りくらいはしていたそうです。


母の知らない、秘密めいた話に何故かほっとする自分がいました。


「まぁとんだ事になって・・・本当気の毒だった」

「いいえ、もう何とか乗り越えましたから・・・」

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