第9話:これからの僕と君

学校を飛び出し待ち合わせた先は僕の家の前。

僕は既に準備は出来ており、自分の家の前で待っていた。

すると李乃さんが走ってやってくる。



『やーやー......お待たせ.......疲れたぁ.......』


「李乃さん!.....大丈夫ですか?少し休憩してから行きましょうか。」



休ませてあげようかと思い、数分間家に前でしゃがんで李乃さんが休憩し終わるまで待った。

そして李乃さんが立ち上がり、僕の手を引く。



『行こっ!早くしないと祭り終わっちゃうよー?笑』


「っちょっ...!ひっ...引っ張らないで...!李乃さん...!」



そのまま駆け足で駅に向かい、数分電車に揺られながらもみなとみらいに着いた。


降りると駅のホームには僕らのような学生が沢山いた。

僕たちは私服で来たけど、制服やジャージでくる子たちもちらほら居る。

今まで感じていた謎のアウェイ感も無く、むしろ李乃さんとの祭りが楽しみでいっぱいだ。


僕は李乃さんの背中を押して横浜の街へと繰り出す。



『ちょちょちょっ!押さなくても祭りは逃げないってー!』


「早くっ!行きましょう!」



《赤レンガ倉庫広場》



興奮でお腹が今まですいてこなかったけど、ふとお腹が空き倉庫で何か食べることにした。

席を取るのに20分かかったが無事に席を取れた。


何を食べるのかについては既に決めてある。

僕は李乃さんの分まで買っておいた。あとはブザーが鳴り取りに行くのを待つだけ。



「李乃さん買っておいたのであとは取りに行くだけですよ」


『え"っ?買ってきてくれたの?マジで?ナチュラルに優しい事するんだから郁は......ありがとう...!』



若干照れながら僕にありがとうと言う。

そうしてブザーが鳴るのを待つ。


それから数分後ブザーが鳴り、取りに行こうと席を立った時李乃さんが僕の服の袖を掴んで言った。



『郁は座ってて?お盆は私が取りに行くから!』


「い...いえ大丈夫ですよ!僕が行きますから!」


『いーから!奢ってくれたんだからそれくらいしなきゃ!だから待っててー!』



そう言って店の方に行ってしまった。

そして李乃さんが二つのお盆を持って帰ってきた。



『はい、これ郁のー!』


「あ...ありがとうございます...」



申し訳なさがあり、つい謝ってしまった。



「すみません.....僕が持つべきものを持たせてしまって.....」


『なーに言ってんの!奢られるだけで何もしない方こそ謝るべきなんだから気にしないの!

女だって施されっぱなしは申し訳ないって思うもの!女以前に人間なんだから!

お盆くらい私が持つよ。なんのために腕があると思ってんのー?笑』



謝る僕をそう言って励ましてくれた。

そのおかげでより一層ご飯が美味しく感じた。


20分程で食べ終わり僕達は倉庫を出て、これから花火が上がるので観覧車へと急いだ。



《観覧車内》



『ふぅ~....間~に合ったぁ~......』


「ギリギリでしたね......」



僕らと同じ考えで観覧車に乗ろうとしていた人たちがいて、それでも何とかギリギリ観覧車に乗ることが出来た。



『いや~にしても高いなぁ~花火が楽しみだねぇ~郁?笑』


「楽しみですよ。とても懐かしい感じがして。」


『懐かしい感じ~?』



僕は窓の外に広がる夜景を眺めながら、李乃さんに向かってこう言った。



「僕を遊びに連れ出したあの日.....数か月前の話であっという間だなと思ったんです....この前思い出して......李乃さんと遊んだのがもうこんなに時間が経ったのかと。

あの時は李乃さんが僕を誘った.....けど今回は僕が李乃さんを誘った.........

僕って....昔より変われましたか....?」



少し照れくさくそう李乃さんに聞いた。

すると李乃さんは———



『すっごい変わったと思う。昔よりはっきり喋るようにもなったし、こうやって私を祭りに誘えるようになってるし。

私なんかより成長してるよ!まったく私はダメだねぇ~.......』


「李乃さん......」



李乃さんは少し暗い顔になってしまった。

気まずい空気が流れてしまった......そんな中李乃さんがこう言った。



『郁.....私まだ....最後の命令してなかったよね...?』


「命令...?え...えぇ.....そうですね......それがどうかしたんです?」


『........郁が....私に最後命令してくれない?』



僕を見てそう言う李乃さん。

いきなりの事で良く分からなかったが、なんとか飲み込んだ。



「っ.......命令ですか.....命令ってどう言ったら.....」


『なんでもいいよ?奴隷にしても金を貢げとかでも。ホントに何でもいいよ。』



李乃さんはそう言って僕の答えを待っている。

僕はしばらくの間考えた......どう答えようか考え......考えに考えた後僕はこう命令した。



「........" 自分の命を大切にしてください "」


『.......それが郁の命令?いいの?そんなんのでいいの?』



そう聞いてくる李乃さんに僕はこう答えた。



「僕は.....李乃さんが無事に生きているのがいいんです......自殺なんてしないで、僕と一緒にいてくれる李乃さんがいいんです.......テンプレ的な言葉かもしれませんが....確かに心でこう思ったんです.....それが僕が李乃さんにする命令の意味です。」



その瞬間外で花火が上がる。

光が散らばり、光それぞれが他の光と反射して更に綺麗に見える。


空が輝き目が離せない。



「綺麗......」


『うわぁ~きれ~い...!』



窓に張り付いて花火に釘付けな僕ら。

毎年毎年なんとなくの気持ちで見てきた花火が、今年だけは特別に感じる。

いつもと変わらないはずの花火が幻想的に見える。



「すごく綺麗だ......凄い......」


『っ笑......花火に夢中じゃん...笑』



花火に夢中な僕は、観覧車が回りきるまでずっと窓の外を眺めていた。

観覧車から降りてもしばらくの間は空を見続けていた。


花火が終わり、多少屋台を回り楽しんだが時間も遅くなってきたので僕たちは家の方面へと帰った。



《僕の家の前》



「今日はありがとうございます。すごく楽しかったです!」


『こっちもだよ~!ありがとね?笑』



別れの言葉を言い終わり、僕は自分の家に入ろうとドアの方に向かおうとした時.....李乃さんが僕の手を掴んでこう言った。



『ねぇ...?家泊まっても...いいかな...?笑

まだ話し足りないなーって...ヘヘヘ笑』


「.......はい...笑」



一緒に、手を繋いで家に入る。

すぐに僕の部屋に向かい2人でベッドに座る。


李乃さんはベッドに寝っ転がりながら僕の手を握って言う。



『今日の花火、すっごい綺麗だったよねぇ〜.....』



声が疲れや眠気等で小さくか細い声色なのに、僕は少し心がドキッとしたけど我慢して返す。



「そ、そうですね。李乃さんと見れて良かったです。すごく楽しかったです...笑」


『えぇ?笑嬉しいなぁ〜!も〜郁〜!』



握ってた僕の手を李乃さん自身の頬に擦り付けて喜ぶ仕草をする。

少しそれが続いた後、一息つい後李乃さんがこう話し出す。



『......私、郁が病院で私に言ってくれた言葉....忘れないよ絶対.....私の心にすっごく響いたの。


私って郁に構いすぎて親になった気で居たのかも。もっと自分の事を気にかけないとだね。

だって郁は私よりずっとずっと立派で、少し引っ込み思案気味かもしれなくても.....男らしくなってるよ......かっこよくなってる。』

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不登校の僕と君 カオさん @KAO_SAN

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